2007 Fiscal Year Annual Research Report
ルイ=フェルディナン・セリーヌと同時代フランスの大衆雑誌
Project/Area Number |
18520212
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 樹親 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 専門研究員 (50380697)
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Keywords | セリーヌ / フランス文学 / フランス大衆雑誌 |
Research Abstract |
本年度は、本硯究課題が対象とする1900年からの20年間に刊行された基礎資料の追加収集と、その後半期刊行分の精読・分析の2点を到達目標に掲げた。 まず、昨年度の分析で最重要視した資料体「ジュ・セ・トゥ」については、フランス国立図書館が公開しているPDFファイルに未収録の巻号の入手に努め、数号を除き、ほぼ入手できた。また同誌の前半期の記事の調査から本研究の最も重要な存在として浮上した天文学者兼小説家カミーユ・フラマリオンに関する知見を深めるため、彼の主要著作と研究書の入手・閲覧を平行して行っている。 「ジュ・セ・トゥ」誌後半期の調査の結果、残念ながらフラマリオンによる記事は見いだせなかった。しかしながら、もうひとつの資料体である挿絵新聞「リリュストラシオン」(福岡大学付属図書館にて閲覧)には彼による記事が大量に掲載されていることが確認された。しかも彼は、例えば本研究の対象期間以前の巻号にも、人種論や終末論あるいは熱気球飛行に関する記事を寄稿しており、これらはセリーヌへの影響を大いに示唆するものだと書える。したがって同紙については、フラマリオンの記事が掲載されている1868年から1932年までに対象期間を拡大して再調査を急いでいるところである。一方、本年2月、私が非常勤講師として勤務している筑紫女学園大学主催の特別研究会において「セリーヌとフラマリオン-あるオカルト天文学者との邂逅-」という題目で研究の途中経過の一部を口頭発表し、セリーヌ小説における科学技術の進歩に立脚した光景描写や非キリスト教的終末論がフラマリオンの影響下にあるのではないかという仮説を提示した。両者の関連付けをさらに実証・整備することで、セリーヌの創作的想像力の様態の一端が明らかになるであろう。
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