2008 Fiscal Year Annual Research Report
ルイ=フェルディナン・セリーヌと同時代フランスの大衆雑誌
Project/Area Number |
18520212
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 樹親 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 専門研究員 (50380697)
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Keywords | セリーヌ / フランス文学 / フランス大衆雑誌 |
Research Abstract |
本年度は最終年度であり,研究事項の最終整理と統合を以下のように行った。 これまでの閲覧調査の結果,本研究の中心的題材として取り扱うことにした「ジュ・セ・トゥ」誌における重要資料を次の5系列に分類した。1.天文学者兼小説家カミーユ・フラマリオンによる科学啓蒙記事(「リリュストラシオン」紙に彼が寄稿した記事のうち,本研究に関わる示唆的記事も,便宜上,ここに分類),2.モンマルトルの猟奇恐怖劇場グラン・ギニョルの作家アンドレ・ド・ロルドや同劇場の他の作家による戯曲,3.パストゥール研究所副所長エリー・メッチニコフによる医学・衛生学に関する記事,4.複数の寄稿者による道化に関する記事,5.その他の時事的記事(たとえば,戦争とアルコールの関係や,潜水技術の変遷に関するものなど)。これらの記事には,セリーヌの処女長編小説『夜の果てへの旅』(1932年)と第2長編小説『なしくずしの死』(36年),ひいては中・後期の長編小説『ギニョルズ・バンドI・II』(44年,64年)におけるいくつかの描写や人物設定との関連を想起させる部分が少なくない。そのため,各記事と作品の該当箇所との精密な照合を行い,両者の関連付けと影響関係を総括した。一方,セリーヌの書簡やインタビューには,各記事への直接的な言及が少ないため,確実な実証性を裏付けるには至らなかったが,彼の劇作的想像力や思想上の源泉の可能態を十分に抉り出し,今後の研究に貢献できるような展望を提示することはできたと考えている。 研究過程と結果の要旨は研究成果報告書にまとめられるが,本研究の特に重要な点である『なしくずしの死』とフラマリオンとの関係についての詳細な論文を論文集『ステラ』(九州大学フランス語フランス文学研究会発行)に公表する予定である。
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