2008 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ南西部の境域をめぐるチカーノとアメリカ先住民の文学
Project/Area Number |
18520222
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜納 育江 University of the Ryukyus, 法文学部, 准教授 (20284945)
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Keywords | チカーナ / チカーノ文学 / グローリア・アンサルドゥーア / 先住民女性 / アメリカ文学 / 境域(ボーダー) / シェリー・モラガ |
Research Abstract |
本研究課題の最終年度である本年度では、チカーノ文学でも女性であるチカーナの書き手たちについての研究に集中した。本研究を進めていくうえで理論的基礎となったグローリア・アンサルドゥーアの境域文化論は、主に男性の書き手による初期のチカーノ文化論あるいは境域文化論に、人種や言語のみならずジェンダーやセクシュアリティの視点を交差させることによって生成された理論であると同時に、アメリカ文学全体の展望を再編するための視座にも少なからず影響を与えうる強力な理論であり、さらにはアメリカを越えた世界の文学のコンテクストにおいても有効となることもわかってきたが、最終年度では、特に本研究課題の当初の問いである「アメリカの南西部におけるチカーノと先住民文化の文学的な接点とはどのようなものか」に立ち返るためにも、アンサルドゥーアの境域文化論と、そこで強調される「先住民女性の伝統」が、アンサルドゥーア以外のチカーナの書き手による文学テクストを解釈するうえでどのように有効なのか、つまりそれらのテクストには先住民文化の特質が反映されているかについて究明するように努めた。アナ・カスティーヨ、パット・モーラ、エレナ・マリア・ヴィラモンテス、ロルナ・ディー・セルバンテス、マリア・エレナ・ルカスなど、ジャンルと問わずさまざまなチカーナの書き手の言説を検討した結果、シェリー・モラガの戯曲に、アンサルドゥーアの言説と通底する、クイアセクシュアリティおよび千住民性へのこだわりが強く反映されているように思われた。モラガについての研究成果は、本年度に米国ニューメキシコ州アルバカーキで行われたアメリカ学会の年次大会にて口頭発表した。その後は、発表したその英語論文を学術誌へ投稿するために、改訂作業を行っている。
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Research Products
(3 results)