2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 一義 Kyoto University, 大学院・文学研究科, 教授 (30119870)
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Keywords | プルースト / 絵画 |
Research Abstract |
プルーストと絵画の歴史的背景を考察するため、前年度にひきつづき『失われた時を求めて』と関連作品、『プルースト書簡集』、フランス国立図書館所蔵のプルースト資料などを読み直し、作品の校訂版索引、『プルースト書簡集総合索引』などを活用しつつ、そこにあらわれた絵画の歴史的背景に関する情報を抽出した。さらにプルーストが小説執筆に使用した草稿帳やメモ帳も調査した。その結果、作家が見ていた当時の美術館や展覧会、私的コレクションの実態、美術をめぐる専門書や論文などがかなり判明し、作家がどのような状況で実在画家の画と出会い、それをいかに小説に採り入れたかについて、部分的ではあるが実証的調査結果をとりまとめることができた。 また作中画家エルスチールの人物と作品についても、それがいかなる歴史的背景をもとに創作されたかを実証的に明らかにするとともに、架空画面を文学であらわす上で、ヴィジョンとスタイルにどのような問題が生じ、それを作家がいかに解決したかについても考察した。 これらの成果の一部を、パリ、カブール、ミュンスター、京都のシンポジウム(学会発表欄参照)や、専門誌Marcel Proustなどに発表し、専門家の批判を仰ぐとともに、年度末にはこれまでの研究成果を集成する著作『プルーストと絵画-レンブラント受容からエルスチール創作へ』をとりまとめた。
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