2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520226
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
原 研二 Otsuma Women's University, 比較文化学部, 教授 (50115622)
|
Keywords | 影絵 / シルエット / アレクサンダー・フォン・フンボルト / シンケル / フリードリヒ / 光学的表象 / プロフィール / 完全言語 |
Research Abstract |
前年度、中間発表として「研究成果報告書」を作成、フリードリヒとシンケルの光学的業績を評価しておいた。美術といいながら、フリードリヒ界隈の画業がことごとく光学的仕掛けめいていることに注目した。19世紀の像の提供の仕方が、近代アート観からすればきわめて見世物的になっている、透視画法と機械仕掛けを組み合わせた見せ方。さらに、「トランスパレント」。光を透かして画面を見せる工夫。必然的に逆光場面。そういう見世物的にひとを驚かせる工夫が、ひとえにフィクションの只中にひとを巻き込んで感情を揺さぶる効果狙いであったと言い切れない部分がある。「逆光」には、古来図像の抑圧を続けた文化伝統からの突発的解放があると考えられる。 今年度は同じ時代、つまり19世紀前半を追求したのだが、まず注目したのは、影絵によって世界を表現する思考。肖像を影に変換することの意味、ひいては風景をシルエットとする意味に踏み込む。したがって影による観相学、さらには19世紀巨人のアレクサンダー・フォン・フンボルトの「相貌的」景観のとらえ方が世界を断面(プロフィール)とする現象を考察する。 これまでこうした光学的見世物的西欧表象運動において評価し忘れられてきた根本的な欲望、世界を直接的な言語で言い表すにはどうしたらいいのか、という切実な実験欲望が、17世紀完全言語運動の歴史の思いがけない間欠泉を形成している、ということを論じた。
|