2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における性的マイノリティの捏造と解放にかかわるトマス・ハーディ研究
Project/Area Number |
18520227
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
亀澤 美由紀 Tokyo Metropolitan University, 基礎教育センター, 准教授 (60279635)
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Keywords | 英米文学 / ジェンダー論 / 表象文化論 |
Research Abstract |
平成20年度は『ラッパ隊長』『カースタブリッジの町長』を分析対象として、男性ホモソーシャル性が近代とともに変容する過程を明らかにすることを目標とした。そのもとに研究を進めた結果、以下の事柄が明るみになった。 1.『ラッパ隊長』は男同士の絆を「イギリス対フランスおよびその他の周縁部」という空間的広がりに重ねて描き、ナポレオン戦争によって主体が「イギリス人男性」として切り出されていく様子を浮かび上がらせる。「イギリス国民」という国民意識は近代化とともに形成されていったものであるが、多分に喜劇的要素を含むこの小説は、近代的セクシュアリティが前近代的精神-ホモフォビアからいまだ自由な精神-のなかに胚胎し、そこから近代・異性愛主義・ナショナリズム・近代的ジェンダー観が創出されていった様子を描出している。2.『カースタブリッジ』は近代化が男性のホモソーシャルな絆のかたちに与えた影響を歴史的・時間的に辿る。そこからは、近代化と異性愛体制とホモフォビアとが一体となって社会に浸透していった事実が浮かび上がる。また、改変を加えられたさまざまなテクストや映画に分析の視野を広げることにより、カースタブリッジをゼロ地点としてセクシュアリティの近代を辿るこのテクストが、現代のセクシュアリティをも記述することが明らかになった。上記二つについてはその成果を論文にまとめた。さらに加えて20年度は『森林地の人々』を家族および共同体の歴史・女性の主体形成と「男らしさ」というテーマのもとに分析を加える作業も行った。
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Research Products
(2 results)