2006 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカのジャポニズム文学における異人種混淆とオリエンタリズムの研究
Project/Area Number |
18520229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
中地 幸 都留文科大学, 文学部, 准教授 (50247087)
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Keywords | アメリカ文学 / ジャポニズム / オリエンタリズム / 異人種混淆 / 演劇 / ジェンダー / 階級 / エチオピアニズム |
Research Abstract |
1.アメリカのジャポニズムにおいて重要な役割を果たしたJohn Luther Longの調査を行った。Longには、『神々の寵児』というDavid Belascoと共同の「日本」演劇があるが、この演劇が20世紀初頭のアメリカでは『蝶々夫人』以上に影響力があったことが、ニューヨークの公立図書館や早稲田の演劇資料館から資料を取り寄せ検討することにより明らかになった。この点については日本比較文学会で「ジョン・ルーサー・ロングとデイヴィッド・ベラスコのジャポニズム演劇」という発表を行い、国内の比較文学研究者からも様々な知見を得た。 2.『神々の寵児』の上演には、日本人芸術家の牧野義雄が関わっている。牧野義雄の著作や資料をイギリスの漱石博物館や愛知県の豊田市美術館、湯河原の重光葵博物館、一橋大学図書館などから集め、検討を行った。この調査については山梨県都留市の市民講座で「倫敦と牧野義雄」という講演を行った。 3.カナダのカルガリー大学、ロアンゼルスの日系アメリカ人博物館などでWinnifred Eaton関係の資料を収集し、「シンデレラ・コンプレックスとエスニシティの壁-Winnifred EatonのMe:A Book of Remembranceについて」という発表を多民族研究会第5回大会にて行った。また論文をアジア系アメリカ文学研究会の雑誌に寄稿した。Eatonのカナダ人としてのアイデンティティの問題とポストコロニアル小説としてどのようにEatonのような混血文学の位置づけていくかが問題である。 4.ジャポニズム文学が提示する問題は緊密にアフリカ系アメリカ文学の中にオリエンタリズムの形で陰を落としている。また階級問題とジェンダーも極めて重要な要素となる。俳句に興味を持ったRichard Wrightの男性中心主義的なレトリック、また19世紀のアフリカ系アメリカ人のオリエンタリズムを考える上で欠かせないエチオピアニズムと概念が重要であることを論文や発表の中で示した。
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