2006 Fiscal Year Annual Research Report
15・16世紀ドイツ本草書のヨーロッパ諸国への影響について
Project/Area Number |
18520234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
荻野 藏平 熊本大学, 文学部, 教授 (00134429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高宮 正之 熊本大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (70179555)
BAUER Tobias 熊本大学, 文学部, 助教授 (30398185)
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Keywords | 本草書 / ドイツ / 中世史 / 植物学 / 薬学 / 医学 |
Research Abstract |
近世初期の植物誌(本草書)の成立には、特にドイツのマインツにおいて15世紀末に出版された植物誌群が極めて重要な位置を占めている。具体的には1)Herbarius latinus(1484)、2)German Herbarius(1485)、3)(H)ortus Sanitatis(1485)などである。これらの文献は、活版で印刷されたインキュナブラで、今回取り上げる3資料の発行者はすべてGutenbergの助手であったPeter Schoefferになるものである。しかしながら、これらの文献の体系的な研究は、ヨーロッパ・日本を問わずまだ手付かずの状態にある。本課題研究では、上記3群の植物誌の文献学的研究とヨーロッパ諸国への影響を探り、この期の植物誌がさらに近代的植物学へと変貌していく過程を分析・記述する。 初年度の計画は、Herbarius latinus(1484)の解読である。幸いにして、当該資料のCD-ROMを購入することができた。この事は、ドイツのインキュナブラ時代に発行された最初のイラスト入りの本草書で、直接医者にかかれない庶民のための構想され、平易なラテン語で書かれている。全体は2部からなるが、主要部は第1部で、その内容はドイツを含む中部ヨーロッパの150種の薬草の効能がイラストとともに記述されている。なお、植物のラテン語名にはドイツ語名が付記されている。第2部は、通じ薬、瀉下薬、などに役立つ96種の植物ならびに鉱物、動物が紹介されている。分析にはまだ検討を必要とする点もあり、今後も研究継続する方針であるが、これで一応Herbarius latinusの全体像の概略を掴むことができた。 なお、今回のプロジェクトでは、上記の3点の資料を1年ごとに順を追って文献学的に研究・調査する予定である。それにより、個々の資料の異同、影響関係が一層明らかになり、当時の本草書全体の文化史的な意味付けが可能となると思われる。
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