2006 Fiscal Year Annual Research Report
アイルランド・英国・米国の現代<詩>劇にみる古典ギリシア悲劇・神話の翻案と現代化
Project/Area Number |
18520235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
堀 眞理子 青山学院大学, 経済学部, 教授 (50190228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 亨 青山学院大学, 経営学部, 教授 (40245337)
外岡 尚美 青山学院大学, 文学部, 教授 (10227605)
伊達 直之 青山学院大学, 文学部, 助教授 (30316880)
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Keywords | 英米文学 / 美学 / ギリシア悲劇 |
Research Abstract |
本年度は2ヶ月に1回程度、研究会を開き、基礎文献の一つ、G・スタイナーの『アンティゴネーの変貌』を読みながら、現代においてギリシア悲劇の翻訳・翻案が果たす社会的・美学的意義について論じ合った。 併せて堀は、ヘルシンキ大学主催の国際演劇学会(FIRT)で聴いた、本研究に近いテーマの国際的研究動向について報告したほか、メキシコ系アメリカ人でレズビアン作家のC・モラガが自分の体験をもとに『メーディア』を翻案した作品を書き、人類の融合をめざす理論を提示している点について論じた研究論文を『青山スタンダード論集』に発表した。 佐藤は、本研究助成で夏に北アイルランドを訪れ、S・ヒーニーがギリシア悲劇を翻訳する動機となった紛争の歴史を辿る現地調査を行った。研究会でその報告をし、かつ古典の読みかえについてヒーニーが書いたエッセイを紹介し、現代に古典を読む意義を考察した。その成果を日本エリオット協会のシンポジウムと日本アイルランド協会紀要『エール』で発表した。 外岡は、スタイナーの前述書第3章の議論からアメリカ人劇作家M・ウェルマンの『アンティゴネー』を論じ、アメリカにおける9.11以降の悲劇について考察した。このときに使用した理論について論じたエッセイ「演劇とジェンダー」および「パフォーマンス論」は、佐和田敬司ほか編『演劇学のキーワード』(ぺりかん社)に所収の予定である。 伊達は、日本イェイツ協会/ロレンス学会共同シンポジウム「イェイツとロレンスの国家観」において、神話や伝説をモチーフとしたイェイツの様式性の高い詩劇が、個人の身体意識と共同性を志向するナショナリズムや国家意識と重なる点を論じた。研究会ではこれをもとに、イェイツの国家意識がギリシア悲劇の翻案にどのように働いているかを論じ、スタイナーが論じる、国家対個人の問題を反映させた翻訳・翻案作品が継承されている点を確認した。
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