2008 Fiscal Year Annual Research Report
古代ロシア文語萌芽期の最終期における言語特性について
Project/Area Number |
18520239
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
岩井 憲幸 Meiji University, 文学部, 教授 (60193710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80228494)
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Keywords | 古代ロシア語 / ルシズム / 古代教会スラブ語 / ムスチスラフ福音書 / アルハンゲリスク福音書 |
Research Abstract |
本年度前半迄電子化済みのムスチスラフ福音書(Mst)本文全体の校正作業を行った。主にマリア写本(Mar)に依り本文を整えた。しかし昨年同様小詞Ж∈の処理に於て未解決部分計60箇所程が残存。この為正順・逆順索引作成に踏切れなかった。MstのЖ∈の問題は多くの場合個別に判定しうるが、しかし最も判定困難なl-AКОЖ∈のケースが最後迄残った。従ってこの問題に限りOCSのカノン(Mar, Zog, Ass, Sar),ロシア写本(Ostr, Arch),セルビア写本(Miro),ブルガリア写本(Vrac)等々のテクストと比較,Vajsの再構テクスト,マルコ伝に限りVoskre-Senskijのガリツィア福音書,さらに1997年教会スラブ語聖書,2004年ロシア語聖書等のテクストを参照しつつ,l-AКОЖ∈/l-AКОЖ∈の問題を検討した。結論は23例すべてl-AКОЖ∈1綴とみる。しかし次の点が浮上。1)Mstのl-AКОЖ∈は元来この形であったもの以外に種々の別語であったものの言換えがあり。即ちreductionが存する。2)VajsがЖ∈2綴とする例があるが,これもMstは1綴(Mt24.38)。3)以上換言すれば,Mstのl-AКОЖ∈は汎用性が高い。つまり用法がルース。4)日較に用いたセルビア・ブルガリア写本テクストはカノンテクストに近く,解決の鍵にならない。5)Alekseevらのスラブ語聖書(1998,2005)は画期的労作だが,Ж∈の問題に限り余り参考とならず。6)Zaliznjakの小詞研究(2008)も同様。以上からMstのZukovskajaらのテクストは,Ж∈をすべて切離す方式をとるが,Ж∈を続けるか離すかの統一的判断基準の設定はかなり困難であると判明した。なお,今期後半においてMstのマルコ伝,ルカ伝の重出箇所につきカード化し,比較対照研究に資した。さらに一部だが,Archとの対照部分もこれらのカードに追加しつつある。
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