2007 Fiscal Year Annual Research Report
写本テクスト学におけるヴァリアントの総合的研究-中世南仏抒情詩の場合
Project/Area Number |
18520244
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬戸 直彦 Waseda University, 文学学術院, 教授 (30206643)
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Keywords | 中世文学 / 文献学 / フランス;イタリア;ドイツ / 国際情報交換 / 抒情詩 / 電子資料 |
Research Abstract |
2007年度は、本研究の2年目にあたり、予定どおり、ロンドン大学名誉教授ピーター・リケッツ教授を招聘することができた。11月初旬に早稲田大学文学学術院で、西欧中世のパストレル(牧歌)の伝統についての講演をしていただき、さらに日本フランス語フランス文学会の秋季大会(関西大学)のワークショップにおいて、教授の編纂された電子資料であるConcordance de I'occitan medieval 2(=COM2)の解説とじっさいの操作法ならびに今後の計画を話していただいた。 このワークショップには、私のほかに、東北大学の後藤斉教授、福岡大学の高名康文教授もパネリストとして参加し、聴講者も思ったよりも多数にのぼって、ある程度、有意義な討論ができた。COM2は、中世オック語による韻文作品すべてを網羅するものであり、語彙の検索にとどまらず、脚韻の研究など応用範囲も広い。しかしその基礎資料は、従来の校訂版であって、ヴァリアントは含まれていない。今後は、散文作品をも含む資料体と、各写本の読みをも示せる資料体の電子化が予定されており(COM3/4)、リケッツ教授はそのデモ版をじっさいに示してくださった。ただし英国での予算措置が限定されており、今後の進展は予断を許さないという。 今年度は、12世紀末に詩作したガウセルム・ファイディットの一作品の42行にみられる表現jove senhoratge「若い領主」の解釈を軸に、大学の紀要に「封建制語彙の俗語抒情詩への転用」と題して論文を記した。主君と家臣の関係が抒情詩におけるdameと詩人の関係に擬せられる現象を、この作品をあらたにC写本をもとに校訂し、ヴァリアントを勘案することによって解明しようと試みた。歴史的な視座をもとにこれを補完し、アーヒェンで開催予定の国際学会で発表することは、2008年度の課題となる。
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Research Products
(2 results)