2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀科学啓蒙雑誌の表象分析ーー現代社会の神話としての科学イメージ
Project/Area Number |
18520245
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原 克 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 教授 (40156477)
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Keywords | ポピュラーサイエンス / テクノロジー表象 / 通俗科学 / 科学ジャーナリズム / サブカルチャー / 表象分析 / 表象文化論 / 科学表象 |
Research Abstract |
本研究は20世紀の日米独の科学啓蒙雑誌に表出された「科学イメージ」の表象分析を通じ、大衆社会が獲得するに至った科学技術観が「現代社会の神話」として機能する様相を析出することを得た。具体的には当該国の科学ジャーナリズムを対象とし、そこに登場する先端科学技術情報や家電品・日用品情報の表象分析を行った。 「ベルリン中央衛生局と都市のメディア環境----近代的<バイオ権力>の生成と伝播」(平成14年度科研採択)により、死体処理方法・塵芥処理システムなど「科学的な都市型衛生処理問題の進展」が、科学ジャーナリズムによる「情報化」と連動している様相を明らかにしたが、これを理論的起点として分析を発展的に継承・拡大し、分析対象も衛生関連諸機関誌から広く科学啓蒙雑誌へと拡大した。その過程で、広く「都市大衆」のイメージ生成過程そのものを明らかにできた。本研究は先行研究「大衆社会の表象分析」に欠落していた側面を補いつつ、単に科学史・技術史・社会史としてではなく、「大衆化した科学情報」という媒介項を提出することにより、都市生活者の価値の体系を構成するに至る広義な言説の枠組みとして分析するという理論的可能性を提示した。 当補助金の財政的支援を受け入手した資料(1900〜1960年当該国の各科学雑誌・家庭雑誌多数)を上記の視点から渉猟・分析し、その成果を単行本・雑誌論文等により広く一般読者に紹介・還元し書評等で高く評価された。「大衆化した科学情報」を中心的に取り上げ20世紀メディア環境の言説分析を行った大衆文化研究・科学史研究は内外共に未だかつてなく、その独自性を世に明示することを得た。科学技術と都市大衆という限定的問題定立にとどまらず、大衆文化の言説分析を表象一般というより広範な問題領野に関連づけ<マス・群衆>の近代化を体系的に捉え、従来の大衆の言説分析研究の枠組みを変更することに繋がった。
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Research Products
(10 results)