2006 Fiscal Year Annual Research Report
マルセル・プルースト受容研究:初期批評から文学史形成まで
Project/Area Number |
18520252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
禹 朋子 帝塚山学院大学, 文学部, 助教授 (30309364)
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Keywords | 仏文学 / フランス / マルセル・プルースト |
Research Abstract |
本年度は、次の2点について研究をすすめた。 1.新聞・雑誌に掲載された論評についてはAlden, Douglas W., Marcel Proust and his Freneh Crities, Los Angeles, Lymanhouse, 1940.に含まれる1939年までの広汎なビブリオグラフィーを元に作業を進めた。Aldenのビブリオグラフィーは編年体の印刷情報であるため、1900点余りの書誌情報を電子化し、著者、掲載紙(誌)、掲載年月(日)ごとにソート可能な状態にした。この作業により、雑誌や執筆者の重要性が容易に判別可能となった。現物を確認する作業は主としてフランス国立図書館にて行った。その結果、ビブリオグラフィーに記載はあるものの、問題の新聞・雑誌タイトルがフランス全国の図書館情報でも不詳なものや、記載記事に該当のないものも一定数あることが判明し、リストを修正した。 2.関係する雑誌の中でもプルーストの国内受容に最も重要な役割を果たしたLa Nouvelle Revue Francaiseについては、編集部による第一巻の出版拒絶と第二巻以降の受け入れに関しての事情を詳細に明らかにすることにつとめた。具体的にはプルーストおよび当時の編集関係者、寄稿者(Andre Gide, Henri Gheon, Jean Schlumberger, Jacques Riviere)の書簡集、伝記類、同時代人の証言を広範囲に探索し、一定の仮説と結論を得た。すなわち、第二巻以降の出版権をGrasset社から買い取るにあたってプルーストを説得したのは、N.R.F.の出版戦略に則った計画の色が濃く、通説のようにJacques Riviereの熱意やAndre Gideが当初プルーストに対して下した評価を心から反省した結果とばかりはいえない、という結論である。この点については2007年4月14日開催のプルースト研究会(於京都大学)にて口頭発表を行った。
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