2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森本 浩一 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (20182264)
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Keywords | 物語 / ジャンル / メディア |
Research Abstract |
本年度の研究過程においては,近接分野の研究者および博士課程大学院生らとともに「ナラティヴ・メディア研究会」を立ち上げ,数度の研究会を催すとともに,「第1回ワークショップ」を,東北大学情報科学研究科との共催で2008年2月に実現した。これはコミック研究の現状と今後をテーマとしたワークショップで,招聘した研究者との意見交換を含めて,この分野における研究活動の推進に大きく寄与するものであった。本補助金課題との関連では,ナラティヴ(物語)を特徴とするジャンルにおける表現と効果との関係について議論を行い,具体的には,特にコミックのジャンルにおける「表現」論の位置づけを通じて,物語アートにおける「内面」と「世界」の構成という問題を扱う研究の方向性を明確化した。この成果はワークショップ報告書の中の論文に示している。近年,物語という概念がステレオタイプ的な「筋」の構成という意味に矮小化され,人物のリアルな造形と矛盾するかのような議論が,文学においてもコミック論においても散見される。これに対して本研究では,物語ないしミメーシスの概念をより本質的なレヴェルで捉え,行為の連鎖を通じて人間と世界とを同時的に現前化させる営為として再検討している。これはこれまでの科研費補助金による虚構論研究の成果を踏まえたものである。なお本年度中には,ユートピア文学に関する専門家(小樽商科大学教授副島美由紀氏)にレクチャーをお願いし,空想文学における物語の空間(場所)や時間の構成方法に見られる一定の傾向性を明らかにする研究活動も行った。
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