2007 Fiscal Year Annual Research Report
白居易を中心とする中唐「風流」文学の展開に関する研究
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18520270
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
諸田 龍美 Ehime University, 法文学部, 准教授 (20304701)
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Keywords | 白居易 / 恋情 / 中唐 / 風流 / 好色 / 多情 / 平安朝文学 / 長恨歌 |
Research Abstract |
平成19年度の研究によって、以下の諸点を明らかにすることができた。 (1)「長恨歌」が中国恋愛文学史上の画期的作品として、以後の中国恋愛文学に多大な影響を及ぼし得た要因としては、該作が、冒頭句に象徴される玄宗の<汎愛的多情性>と、結句に象徴される<専愛的多情性>という、<多情の二面性>を併せ持つ作品であった点が、特に重要であったこと。 (2)『源氏物語』の「若紫」巻に描写される、光源氏と藤壷との密通は、本居宣長の所説によれば、<深いもののあはれ>を示すために構想された事件であった。しかしそれは、『伊勢物語』第六九段から強い影響を受けて構想された事件であり、その『伊勢』六九段は、さらに中唐の伝奇小説「鴬鴬伝」から強い影響を受けている。したがって、「若紫」の密通を典型例として本居宣長が主張した<もののあはれ>を知る感性は、従来、日本人特有の感性として把握されがちであったが、その感性=美意識の、通時的な淵源は、実は、中国中唐の恋情文学にこそあったと判断できること。 (3)中唐という時代は、恋愛をテーマとする伝奇小説の隆盛や、男女の贈答詩の増加といった現象に象徴されるように、いわゆる<俗>文学の分野を中心に、<女性性>が台頭した時代であったが、そうした中唐文学の特性や時代思潮が、日本の、平安初期における<色好み>の台頭や、和歌の隆盛という「国文学の潮流の変化」に、多大な影響を与えていたと推定されること。
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Research Products
(5 results)