2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国東南方言資料による「文法化」に関する記述的研究
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18520293
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 勲人 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (40250998)
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Keywords | 授与動詞 / 受動文 / 使役文 / 受益文 / 文法化 / 多機能化 / 二重目的語文 / 客家語 |
Research Abstract |
本研究は、中国東南地域のさまざまな方言の文法を詳細に記述・分析することによって、北京語のみを研究対象としがちな従来の研究が看過してきた新たな言語事実を発掘し、「文法化」のプロセスを解明する試みである。今年度の研究成果は主に次の4点である。 (1) 授与動詞を用いた使役文と受益文の構文的関連の解明 東南方言の言語資料を基に、授与動詞を用いた使役文の文法的性質には地域によって違いが見られることを指摘し、そのような違いが生じるに至ったプロセスを文法化の観点から明らかにした。 (2) 授与動詞を用いた受益文と受動文の構文的関連の解明 東南地域では授与動詞を用いた受益文が広く観察されるが、与格後置型の受益文から使役文が成立し、そこから受動文が成立するプロセスを文法化の観点から明らかにした。 (3) 与格後置型二重目的語文の分析 東南地域の諸方言では、与格を対格の後ろに表示する形式の二重目的語文が成立するが、それらが与格後置型受益文から使役文を経由して成立した構文である可能性が高いことを提示した。この成果は、北京大学で開催された「中日理論言語フォーラム」において発表した。 (4) 台湾桃園県の客家語の記述的研究 『東南方言比較文法研究-寧波語・福州語・厦門語の分析-』(好文出版,2002年)で整理した31の文法項目に基づいて用例を収集し、分析を行った。モダリティやダイクシスに関わる文法事項を中心に記述した「会話編」については、整理がほぼ完了したので、まもなく発表する予定である。
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Research Products
(3 results)