Research Abstract |
本研究は,ドイツ語の基本動詞を対象にその使用実態に基づいてデータベースを構築することを目的としている。研究最終年度の20年度でも,引き続き,データ収集にはIDS(Institut fur Deutsche Sprache)が提供するCOSMASIIをオンラインで使用し,各動詞について300例文を集め,分析した。研究当初は非常に多くの動詞を分析する計画であったが,すでに研究初年度において想像したよりも遙かに多くの時間がかかることが判明したので,昨年度から接触打撃動詞と心理動詞についてまず精度の高いデータベースを作成することにし,今年度もまずそれを継続し,その後,主に他動詞についてデータベース化を進めた。その結果,最終的に約350動詞について,形態的特性(品詞属性など),統語的特性(格形,文における位置など),意味的特性(指示物の特性など)を付与するほか,文全体に語用論的特性(発話状況,発話行為など)を付与した。数的には目標通りにはいかなかったものの,今後の研究に役立つ質の高い資料を収集できたこと,そして,コーパスをデータ化する際の様々な問題点を明らかにできたことは,大きな意義があるといえる。この作業について,研究補助者計5名(内4名がドイツ人)を合計約500時間使用した。 平成20年度は,10月の日本独文学会秋季研究会でのシンポジウムにおいて心理動詞を中心に研究成果を発表した。その成果はシンポジウム叢書として今秋出版される。また,今年度出版した著書『中級ドイツ語のしくみ』には,この研究から得られた知見を多く反映させている。今後は,このデータベースの資料をもとに,心理動詞,接触・打撃動詞を中心として,項と文構造について研究をまとめていく予定である。
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