2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520296
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 聖子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (70165330)
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Keywords | 語用標識化(文法化) / 語用標識 / 文法的機能語 / 接続形態素 / 引用標識 / 「談話と文法」 / 構文理論 / 用法依拠モデル |
Research Abstract |
本研究は、日本語と英語の談話における心的態度表意メカニズムを、実際の談話データの分析を通して明らかにし、その機能と表意手段の文法を、「語用標識化」の観点から動的に探究することを目的とする。本研究課題で特に着目するのは、典型的な「文法化」現象のさらに先に起こってくる現象、すなわち、「文法的機能語」が、本来の統語的特質を多少薄め、語用論的機能を強化し、話者の命題態度および発話態度の表意手段として使用され「語用標識」として定着する言語現象である。本研究では、この言語現象を、「語用標識化」とよぶ。この事例研究として、特に、(1)節と節を繋いで複文を作る接続形態素、(2)「と」で標識される引用節(句)構文の記述を中心に分析してきている。 平成20年度は、構文理論Construction Grammar、および、フレーム意味論・フレームネットに基づく構文・語彙の複合的分析の枠組みに関するこれまでの考察を継続しつつ、談話データを用いた構文および語彙の複合的分析・記述の事例研究を進めた。談話データ構築に関しては、子供の言語習得の縦断的談話データの収集、転記、データベース化の作業を継続した。 具体的な成果発表としては、主に下記を行った: (1)本研究において着目して考察している「文法的機能語の語用標識化」に関して、下記公刊論文(1)において、「語用標識化」の位置づけの概要とその事例研究(当為的モダリティの場合)を示し、類例(引用節、発話末の「みたいな」の引用用法、等)を概説した。 (1)藤井聖子2009.「話しことばの談話データを用いた文法研究一話し言葉で構文機能が強化する?一「一ないと」「一なきゃ」「一なくちゃ」の文法」長谷川寿一・伊藤たかね・C.ラマール(編)『心とことば-進化と認知科学のアプローチから』,129-151.東京大学出版会2008. (2)複文(特に条件構文)における話者の認識的態度(epistemic stance)の表出・標識メカニズムに関して、下記論文(2)を国際言語学者会議において発表し、論文集において公刊した。 (2)Fujii, Seiko. 2009. Modality, tense and aspect in Japanese conditionals. Current Issues in Unity and Diversity of Languages. [Collection of the papers selected from the CIL 18, held at Korea University in Seoul, on July 21-26, 2008] (3)語彙と構文の複合的分析・記述の事例研究として、所謂引用助詞「と」が標識する構文の様々な用法・機能に関してコーパスを用いて分析し、下記論文(3)を公開ワークショップで発表し報告書で公刊した。 (3)藤井聖子2009.「所謂引用助詞「と」が標識する構文の用法再考-フレーム・フレーム要素・フレーム間関係の観点から-」『特定領域研究「日本語コーパス」平成20年度公開ワークショップ(研究成果発表会)予稿集』213-220.
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