Research Abstract |
フランス語の他動詞能動,受動,自動詞,代名動詞,非人称の各構文の実例を収集しつつ,同時に,幾つかの代表的な動詞の構文をフランス・マルヌ・ラ・ヴァレ大学IGM研究所の成果も考慮して詳細に調査した。例えば,直接目的,間接目的,代名詞動詞に関して次のような点が明らかになった。 動詞traiter。Traiter la question-traiter de la questionの違いは微妙だが,直接目的の範列の一体性が強く構文的意味としてはtraiter le petroleのような物質名詞が直接目的に来るような場合の意味が働いていると考えられる。直接目的が抽象名詞のquestionの場合,間接目的のde la questionと意味が接近するように見えるのは正に名詞の抽象性の故である。しかし,この意味「(処理する→)取り扱う」が出てくるのは文脈(絵画における「色の取り扱い」,数学,情報工学における「取り扱い,処理」)にも大いに依存している。これに対して,間接目的においては,前置詞deの存在により,文脈に依存せず常に抽象的意味「取り扱う」が保証されていて,その範列に制限はないと言える。 動詞approcher。この動詞についても,approcher-N_1,approcher-de-N_1,s'approcher-de-N_1の違いが問題になる。前二者の直接と間接構文では「抽象移動」が「具体移動」を頻度で圧倒している。特に直接構文ではこの傾向が著しく,「近づきになる」という意味が出てくるのはこの構文のみである。三番目の代名詞動詞構文では「抽象移動」と「具体移動」の頻度がほぼ拮抗している。前二者の違いは,直接構文では意図性のある「近づきになる」,「対象の把握」,意図性のない「移動の客観描写」というように多様性があるが,間接構文ではNh-V-de-Ntemps(Nh「人間」,Ntemps「時間表現」のような無意図的な例が圧倒的に多い。これらの点は辞書記述にはなく特に構文頻度の確認は貴重である。
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