Research Abstract |
フランス語の構文の他動性との関連で,他動能動,受動,自動詞,代名動詞,非人称の各構文間の対応関係の分析を,実例調査・収集(フランス,Marne-la-Vallee大学IGM研究所の資料,等)を通して行った。また,個別動詞の事例分析と全構文に頻出する前置詞deの統辞機能と関係的記号内容を分析・整理した。 例えば,動詞payerの事例では,No-V-N1-a-N2-pour-N3の構文で,N1の範列がN2もN3も含むのは周知のことであるが,N1以外の範列でのN3の多様性は注目すべきである。特に,pour-Vinfはpayerの構文構成要素とは認められていない。この動詞の4項可能性と両立可能性には解明すべき点が多く残っている。 deの統辞機能は次の通り。1.非動詞文の述辞導入,2.述辞に直接に従属する一次機能の拡張の指示。2.1.述辞下位クラスを特徴付ける特有機能として,不定詞主辞,非人称構文の不定詞「実主辞」,不定詞直接目的辞(直接目的のde-Vinf),間接目的辞(多種),etre構文,等の属詞の指示。2.2.述辞下位クラスを特徴付けない非特有機能として,「場所,時,様態」,等の指示。3。一次機能の拡張に従属する非一次機能の拡張の指示。3.1.非一次機能の特有機能の指示(多種),3.2.非特有機能の指示(多種)。 deの関係的記号内容は主に次の三種にまとまめられる。1.「中性的ゼロ(積極的意味要因なし)」(非動詞文の不定詞述辞導入,不定詞主辞指示,非人称構文の不定詞「実主辞」指示,不定詞直接目的辞指示),2.「分離・出発点」(これはdeの基本的意味価値で「話題,手段,材料,様態,時・場所,評価」,等多くのものがこれに還元しうる),3.「中性的属格」(Nl-de-N2の種々のdeに統一的に認められる)。
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