2007 Fiscal Year Annual Research Report
談話理解モデルを利用した日英語名詞句の分布と選択にかかわる語用論的研究
Project/Area Number |
18520306
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉田 悦子 Mie University, 人文学部, 准教授 (00240276)
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Keywords | 語用論 / 指示表現 / 談話 / 計算言語学 |
Research Abstract |
19年度の達成目標は、初年度の言語分析に基づき、談話構造の階層性を記述し、指示表現と談話の大局的な整合性とのかかわりを実証することである。さらに、談話における日英語の名詞句の振る舞いには共通した現象があり、談話の整合性に貢献していうことをセンタリング理論を拡張したキャッシュモデルを援用することによって明らかにすることである。 まず、日本語対話データ8対話分に加えて英語の対話データ8対話分に関して英語名詞句と日本語名詞句との対応関係の分析(吉田2006.3.;吉田2006.11)を詳細に検討した結果、談話における日英語の名詞句の振る舞いには共通した現象があり、談話の整合性に貢献していることが明らかになった。つまり、日英語の両方において、(ゼロ)代名詞よりはむしろ名詞句(裸名詞)こそが談話の整合性と有機的に結びっいており、談話の整合性は、文法や語順に基づく規則性よりはむしろ談話の相互作用性や顕在性の認識という語用論的機能に影響をうけている。この成果については、スウェーデンでの第10回国際語用論学会にて7月に発表した。さらに談話の相互作用性と指示表現パターンとの関連性や、名詞句と節構造が談話展開に及ぼす影響について考察し、分析結果を報告した(Yoshida 2007)。また、最終年度への橋渡し的な研究として、異なるコーパスを分析対象とした研究(駒田・吉田2008;竹井・吉田2008)や指示関係のアノテーションシステムの検討(吉田・谷村2008)をおこなった。これら一連の研究は、センタリング理論を拡張した実証的研究として意義があるだけでなく、ゴーパスデータから談話構造を読み解く試みを示すものとして重要である。 最終年度は「日本語話し言葉コーパス」より4対話分とBNCおよびICE・GBにおける対話データのうちそれぞれ2対話分、計8対話を抽出し、地図課題対話コーパスの生起パターンと比較し、話しことばにおける一般化された現象としてとらえられるかどうかの可能性を探る予定である。
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Research Products
(9 results)