2007 Fiscal Year Annual Research Report
旧ユーゴスラヴィアのメディア、言語、アイデンティティー
Project/Area Number |
18520307
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 恵子 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (10229726)
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Keywords | 旧ユーゴスラヴィア / バルカン / 言語と社会 |
Research Abstract |
平成19年度は、前年度の継続研究として、旧ユーゴスラヴィアの中のセルビア、クロアチアを中心にメディア状況を観察した。また同時に談話分析やテクスト分析の方法についても見当した。 平成19年はセルビアのコソヴォ独立が重要な国際的問題となったことから、ここに注目しセルビアにおいてコソヴォに関してどのような言説が現れているか、またセルビア大統領選挙の前後における一般の人々の言語行動などを観察した。具体的には、セルビアの週刊誌Vremeからコソヴォ関連記事を集め、その主要テーマや語彙に注目して分析を行った。またセルビアを擁護するロシアの言説にも目を向け、ここでは、「間接的言語行為」としてのコソヴォ言及、すなわちコソヴォに言及する事でグルジアやチェチェンを牽制する大国の意向があることが明らかになった。セルビアの言説も同様に、「バルカンの安定」に言及することで、コソヴォ独立を拒否する、というレトリックを多用していることがわかった。 またクロアチアやボスニアが自己をどのようにアイデンティファイしているかを調べるために、前年度の研究に引き続き、クロアチアとボスニアのメディアテクストからBalkanという語の用法を集め、セルビアのテクストと比較しながら分析を行った。またこれとは別に、オーストリアのブルゲンラント州にいるクロアチア系少数民族の言語調査を行ったが、これは祖国から切り離された民族集団がどのようにアイデンティティーを維持、あるいは喪失するかという問題であり、本研究とも密接な関わりを持つ研究テーマとして設定されることがわかった。 平成19年度の成果は、平成20年1月に行われた北海道大学スラブ研究センター主催のシンポジウム「スラブ・ユーラシア学の幕開け」において、その一部を発表した。
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Research Products
(3 results)