2009 Fiscal Year Annual Research Report
旧ユーゴスラヴィアのメディア、言語、アイデンティティー
Project/Area Number |
18520307
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 惠子 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 教授 (10229726)
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Keywords | 旧ユーゴスラヴィア / セルビア / ボスニア / クロアチア |
Research Abstract |
平成21年度は本課題研究の最終年度として、次の2点を中心に研究を進めた。 (1)過去三年間にわたって実施した調査、考察をまとめながら、さらに事例研究を行った。具体的には、2008年7月に旧ユーゴスラヴィア戦犯としてボスニアのセルビア人指導者ラドヴァン・カラジッチが逮捕されたことを受けてのセルビア、ボスニアにおけるメディアの反応、またそこに現われる当該社会の言説を考察し、かつてのミロシェヴィッチ裁判や彼の死をめぐる報道や、あるいはクロアチアのアンテ・ゴトヴィナの逮捕に関連する報道における言説と比較した。これらの考察は、今なおボスニア連邦とセルビア人住民の間で統合に困難を抱えているボスニアのさまざまな言説、情報発信の姿勢などとともにこれからも継続的に考察をしていく必要があると考えている。 (2)本研究においては、メディアが担った歴史的役割にも注目する必要があると考えた。そこで、19世紀クロアチア民族主義興隆期にダルマチアで発行された雑誌『Zora Dalmatinska(ダルマチアの夜明け)』とその発行者であったアンテ・クズマニッチに注目し、雑誌の役割、そこで用いられている言語、またクズマニッチの言語観について考察した。クズマニッチは、同時代に首都ザグレブでリュデヴィト・ガイによって推進されていたイリリア運動に対立した偏狭な地域主義者であるという見方がしばしばなされてきたが、クズマニッチ自身の著述やその職業活動からそのような見方が正当ではないことが明らかとなった。この研究成果は平成22年度以降に論文としてまとめる予定である。
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Research Products
(1 results)