2007 Fiscal Year Annual Research Report
会話フランス語コーパスによる談話構築・理解に関する意味味論的研究
Project/Area Number |
18520308
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60129947)
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Keywords | 談話 / コーパス / 意味 / 状況 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度行った指示と照応に関する談話的現象、特に談話内への談話指示子の導入とその維持に関する理論的研究に基づいて、実際の会話フランス語コーパスの分析を行なった。その結果、次にあげる昨年度の理論的予測の大部分について、肯定的証拠となる現象を発見することができた。昨年度の予測とは、1)名詞句の指示対象は変数としてではなく、話し手・聞き手の心的表示に登録される談話指示子として記述できる2)動的意味論のように文脈情報を論理式に取り込むのではなく、心的表示に蓄積する方法が実際の談話分析に即している3)名詞句の意味解釈は、それが解釈される状況に依存的である。言い換えれば、名詞句は状況から外延への関数である。実際のコミュニケーション状況において行われる談話の構築と理解は、時系列に沿って展開されるものであり、いったん談話に導入された談話指示子は、後続談話で照応の対象となる。文の境界を越える照応過程の形式意味論的記述はRussell以来の課題であるが、談話に導入された談話指示子は変項ではなく、後続談話の理解においては心的表示に登録された定項として扱う必要があることを、会話コーパスに基づく記述的調査からも、名詞句の指示と照応について行われて来た理論的研究からも導くことができる。伝統的な見方では新規導入名詞句の指示対象は変項であり、演算子の作用域においてのみ束縛される。しかしこのような見方では実際の談話の持つ累積的な性格を表現することができない。本研究においては談話のも持つ累積的な性格を、談話指示子の変項から定項へのアップデートと見なすという仮説を立てて、本年度はこのメカニズムの理論的基盤を追求した。
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