2007 Fiscal Year Annual Research Report
台湾原住民諸語の普遍性と多様性に関する類型論的研究
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18520317
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片桐 真澄 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (80294388)
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Keywords | 言語学 / 外国語 |
Research Abstract |
平成19年度は、初年度に収集した台湾諸語に関する言語資料の整理と分析を行うとともに、初年度に収集できなかった種類の資料の収集や、分析の結果新たに必要となる資料の収集を行った。さらに、台湾原住民諸語を含む、いわゆるフィリピン・タイプの諸言語に体系を見られる多様性を把握するために、バリ語をはじめとするインドネシア諸語について資料を収集した。具体的な研究実績は以下のとおりである。 (1)台湾原住民諸語に関する言語資料の整理と分析および文献資料の収集 初年度に収集した台湾原住民諸語の言語資料(音声資料・映像資料)を文字化し記述を行い、形態や構文ごとに整理・分析を行った。それにより新たに出てきた問題点や資料上の空白を抽出した。また、昨年度に引き続き、台湾原住民諸語とそれと類型的な関係の深い諸言語に関する記述資料および文献資料の収集を行った。特に、関係諸語のうち、次に見るようにルカイ語の特異性や台湾原住民諸語の多様性を捉える上で平行的であると考えられるインドネシア諸語のバリ語について、現地に赴き、文献質料の収集を行った。 (2)現地調査による台湾原住民諸語、特にルカイ語の形態・統語に関する言語資料の収集 台湾原住民諸語の中でも、特に類型的に特異であると見られるルカイ語について詳しく調査するために、その形態・統語に関する現地調査を行った。具体的には、ルカイ語の母語話者からの10日間にわたる聞き取り調査により形態および統語に関して資料を収集した。資料は口述筆記およびデジタルビデオにより記録し、パソコンで整理・編集した。 (3)得られた資料の整理および分析・考察と今後の課題 (1)および(2)によって得られた各資料について、分析・考察を行った。特に、形態・統語資料を見る限りにおいては、ルカイ語の特異性に関して、従来他の台湾原住民諸語やフィリピン諸語と異なるタイプとして捉えられてきたヴォイス体系が、バリ語などに見られる縮小したフォーカス体系と類似していることから、オーストロネシア諸言語の中で統一的に捉えられることが可能であると考えられた。このことに関してさらに談話・テクスト資料により実証する必要があると思われるので、今後はテクスト資料および談話資料の収集とその分析・考察を中心に行う。また、最終年度に向けて台湾原住民諸語を統一的に捉えるべく理論的な考察を進める。
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