2006 Fiscal Year Annual Research Report
歴史語用論から見た談話標識の発達-ドイツ語・英語・日本語の事例に則して
Project/Area Number |
18520331
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 亮子 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (50306859)
小野寺 典子 青山学院大学, 文学部, 助教授 (90248899)
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Keywords | 歴史語用論 / 談話標識 / ディスコース・マーカー / 話しことば / 対照言語学 / ドイツ語 / 英語 / 日本語 |
Research Abstract |
ドイツ語と日本語は類型論的にも地理的にも離れた言語文化に属すると言える。ところが、意味変遷・文法化・間主観化といった観点から見た時、ドイツ語(英語)を含む印欧語の人称代名詞T形-V形使い分けと、日本語の敬語表現のいくつかには、その用法を司る社会的要素(年令・社会的地位・親疎など)の近似性、どちらも文法化・間主観化を起こしているなど類似点も認められることが小野寺の調査の中でわかってきた。今後、小野寺は談話標識の観点からも考察を進めたい。 ドイツ語に関して高田は、1802年にシュトラースブルクとパリで刊行された稀観書である英独両語の会話本"Englisch-deutsche Gesprache zum Gebrauche beyder Nationen"を入手し、そのテクストをデジタル化した。これを資料として、この会話本で扱われている93の日常生活の状況・場面(例えば自己紹介、旅行、観劇、病気)における具体的な会話文を分析すると、一方では話しことば性を反映するための分節詞、心態詞、間投詞、呼びかけ語、省略文の多用などが明確に見て取れ、また他方ではさまざまな状況(感謝、依頼、賞賛、異議など)での言語的儀礼として現代とは異なる表現が1800年頃に多く確認されることが判明した。 日本語に関して鈴木は、現代の会話で頻出し引用の助詞として知られる「〜って」の歴史的変化に焦点をしぼり、江戸時代(1830年代)の滑稽・人情本等から会話体の記録を得、更に明治時代(1880年代)の言文一致体の小説、昭和初期(1930年代)の小説、そして1980年代の現代小説と実際の会話の録音資料も使った。その結果、引用助詞から話者の主観を表す談話標識への意味変化だけでなく、発話の半ばで起こる引用助詞から、発話の末尾や冒頭に立つ談話標識へという構文上の変化も重要なポイントであることがわかった。
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