2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520352
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高山 知明 Kanazawa University, 文学部, 准教授 (20253247)
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Keywords | 音韻学 / 日本語史 / 五音図 / 音韻 / 音韻史 |
Research Abstract |
今年度は,本課題の核心部分にあたる,近世初期における発音に対する関心の高まりが何に起因するのかという問題を中心に考察した。新たに注目すべき点としては,五音図の果たした役割である。五音図はこの時期,謡曲の発音指南書にも多く引用されていることから,以前に比べて社会的により広く知られるようになったことがうかがえるが,その使用局面の拡大によって,五音図の持つ役割も変わってきたものと考えられる。今後,五音図と,母語の音韻に対する認識の深まりとの関係については,さらに考えていく必要のあることが明らかになった。 とくに,五音図との関係を考えるうえで無視できないのは,中世期から江戸期にかけて生じた諸々の音変化である。長母音の形成,破擦音化,四つ仮名の合流,さらに17世紀以降のハ行子音の脱唇韻化といった変化によって生じた諸特徴はいずれも,元来の五音図の枠組みによるだけでは理解するのが難しい面を多分に持つ。それだけに当時の知識人たちも五音図とのズレに悩まされたに違いない。その齟齬をどのように克服しようとしたのかという側面から,主要な文献が示す問題も改めて考え直さなければならない。そこで,そのような観点から具体的問題に検討を加えた。 具体的問題の一つとして,四つ仮名の区別を説く際に前鼻音の有無が問題とされた当時の背景にも目を向けた。この特徴が区別の実態を踏まえたものか否かが以前より研究者の間で議論されてきたが,この問題は実際にはもっと複雑であり,単純に黒白を決するべきでない。むしろ,本研究では,この鼻音に目が向くきっかけとして前鼻音の衰退化が関わっていることを推定し,その点の重要性を論じた。近世期の音韻を理解するうえで,漢語の問題も重要であり,漢語の音韻的特徴についても,本課題の問題を今後さらに深めるために必要であると考え,考察を進めた。
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Research Products
(2 results)