2007 Fiscal Year Annual Research Report
言語進化理論からみた英語史における「統語的埋め込み構文」の創発の意味について
Project/Area Number |
18520392
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大澤 ふよう Tokai University, 文学部, 教授 (10194127)
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Keywords | 統語構造 / 創発 / 生成文法 / 埋め込み / 機能範疇 / 古英語 / 進化 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度明らかになった、節構造の埋め込み現象と名詞句の中の埋め込み現象が統一的にとらえられるということを踏まえて、さらに、埋め込みという現象の意味を、さまざまな観点からも追求してみた。Hauser, Chomsky, and Fitch(2002)の中で言われているrecursionと共通する部分もあるが、それに対する批判的なども考慮し、Hauser, Chomsky, and Fitch(2002)では、ややあいまいであった、と思われるrecursionの定義を明確にした。すなわち、統語的埋め込み構造こそ人間言語たるゆえんである.こと、そしてそれはある要素を、同-ステータスのものの中に埋め込むことで、それは機能範疇によって可能になったと提案した。本研究で考えている埋め込みは単なる繰り返しとは、本質的に違うものであるということを主張した。したがって、当該の機能範躊が存在しないうちは、それに関係した埋め込み現象は存在しない、ということになる。 統語的埋め込みは、概念の中に概念を埋め込むという、しかも、それが単なる意味的なもののみに基づいているのではなく、構造に基づいて行うという,これは人間言語にしか存在しない特有なものであることを提案した。動物にも言語がある、あるいは、言語はコミュニケーションの手毅として発達してきた、という説に対して、動物言語といわれるものにも、繰り返しあるいは、等位的なものがある、ということ、を認めながらも、あるいは、コミュニケーションの手段としての言語の側面も認めながら、このような、単なるコミュニケーション手段というものと、人間言語とはまったく本質的には違うものであるということを、論じた。このような、埋め込みは意味的には希薄な、機能範疇が存在するからこそ可能になっている、という点は言語の変化、進化を考えるうえで重要であると思われる。 このような変化は、英語が統語優位の変化の方向性を向いているのではないかといことも示唆したいが、これはまた次回以降の研究にゆだねたい。
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