2006 Fiscal Year Annual Research Report
多文化・多様化に即した日本語教育方法論の探求-戦時下の日本語教師養成を手掛りに-
Project/Area Number |
18520410
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松永 典子 九州大学, 大学院比較社会文化研究院, 助教授 (80331114)
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Keywords | 人材養成 / 拓南塾 / 錬成 / 南方 / 人間形成 / 拓務省 / 大東亜省 |
Research Abstract |
<18年度の調査報告> 戦時下の中国占領地、「南方」占領地を対象地域とし、中国から「南方」につながる人材養成を取り上げ、再検討することを目指した。具体的調査としては、教科書をはじめ国内の関係資料を収集し整備した。ただし、新たな教科書・教材の発掘には至らなかった。他方、北ボルネオ地域のうちブルネイでの調査を初めて実施することができ、当時を知る関係者の口述資料を得ることができた。北ボルネオ地域については他の地域に比し研究が遅れているが、現在なお日本語で会話ができるレベルの人材がブルネイでも確認できたことは、当時北ボルネオでも、一定程度の日本語教育がなされていたことのひとつの具体的証左である。 <18年度の研究調査により得られた知見> まず、戦時下の国民教化の理念・方法論である「錬成」をキーワードに、第二次世界大戦の時期の人材養成を大きな枠組でとらえることにした。「錬成」に着眼することにより、「総力戦」下で実施された人材養成の全貌が見えやすくなると考えたためである。その一例として、東南アジア開拓のために設置された民間人養成機関である「拓南塾」に着眼した。「拓南塾」の人材養成を取り上げたのは、そこでの教育実践には異文化に向き合うために必要な訓練が豊富に内包されていたのではないかと考えたためである。たしかに一面では、「拓南塾」の創設は国策に沿うものであり、そこには帝国主義的な発想や植民主義的な意図があったことは否定できない。しかし、その一方で、「拓南塾」には東南アジアの諸民族と融和し、彼らの国づくりに命をかけて協力せよという精神があった。その塾の精神に基づいた教育理念・教育方法には、異文化接触におけるコミュニケーションの方法と柔軟な思考方法を身につけることに資する面があったと言える。
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