2007 Fiscal Year Annual Research Report
多文化・多様化に即した日本語教育方法論の探求-戦時下の日本語教師養成を手掛りに-
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18520410
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松永 典子 Kyushu University, 大学院・比較社会文化研究院, 准教授 (80331114)
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Keywords | 人材養成 / 日本語教育 / 人間形成 / 錬成 / 異文化接触 / 日本語教員 |
Research Abstract |
本研究課題の遂行にあたり、「南方」占領地の中でも特に多文化化・多様化が顕著な地域としてマラヤ(現マレーシア、シンガポール、ブルネイ)、中国占領地を取り上げ、研究を重ねてきた。中国占領地域に関しては、研究課題遂行中であるが、「南方」地域(主にブルネイ)に関する一連の研究の区切りとなるものとして、『「総力戦」下の人材養成と日本語教育』をまとめた。以下、その概要である。 戦時下の日本語教育自体は「日本精神」の普及という日本のナショナリズムの扇動に利用されたが、日本式の「錬成教育」は一部の人々には今日に至るまで多大な波及効果をもたらしている。こうした及効果から考えても、当時の人材養成のあり方には今日の日本語教育の多様化にも対応し得る普遍・的側面もあったのではないか。この点に着目し、個々の教育者の教育実践の取り組みや教育理念、教育効果を拾い上げ再検討した。特徴は大きく2点ある。 第1点は、現地の青少年に多大な波及効果を与えた日本人教師が当時、「人間形成」の意識をもって教育に臨んでいた点など、日本人教師の教育理念・教育方法に関して、個々の事例をもとにいくつかの特徴を指摘している点である。第2点は、当時の人材養成の要となった「錬成」(皇国民の錬磨育成の意。この時期の教育の目的・内容・方法を包括する概念)を「総力戦下の人間形成」という観点から捉え直すことにより、当時の人材養成が異文化接触において果たした機能を検証した点である。
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Research Products
(1 results)