Research Abstract |
本年度は,まず,英語熟達度を測定するために作られたTOEICとリスニングにおける個別技能を測定するために作られた韓国修学テストを,日本人大学生を対象に比較調査した。同じ学習者に2つのテストを実施し,両スコアの相関を調べたところ,有意で高い相関が出ることはなかった。この理由として,TOEICの方はビジネス関係の専門語彙はじめ,低頻度の語彙もよく出てくる。発話速度も1分当たり150語以上の速いスピードになっている。一方,韓国修学テストの方は,語彙面でも基礎的なものが多く,発話速度も130語程度でありそれほど速くはなかった。この結果,TOEICで高得点をとれる学習者は,韓国修学テストでも高得点が取れるが,逆に,韓国修学テストで高得点できてもTOEICでは高得点が取れるとは限らず,これが両テストの相関を低くしていることがわかり,両テストで測定しようとしている対象が,異なる可能性が示唆された。 そこで,韓国修学テストで扱って個別技能のうち,リスニングで重要と思われる技能として,「文中に明示されていない情報内容を推測・理解できる技能」を取り上げ,この技能が,質問形式(解答の選択肢の有無)によってどのような影響を受けるか。その影響の受け方は聞き手の英語熟達度とどのような関係にあるかを調査した。その結果,リスニング本文にある非明示情報の推測・理解度は,選択肢がある場合の方がない場合より高くなり,この傾向は英語熟達度が低い場合に顕著に見られることがわかった。このことから,英語熟達度の高い学習者には,選択肢のない質問で推測させることが学習活動として可能であるが,低い学習者の場合には,推測のヒントとして選択肢を与えることが重要であることが示唆される。 今後は,今年度開発したリスニング処理速度やリスニング・スパンを測定できるソフトを併用し,聞き手の推測力が,これらの要因とどのように関連しているのかについても調査していく予定である。
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