2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者のメタフォリカルコンピテンスに関わる母語(日本語)知識の功罪
Project/Area Number |
18520469
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
東 眞須美 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (80212504)
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Keywords | 比喩・メタファー / イディオム / スキーマ / 認知・イメージスキーマ / セマンティックフィールド / 意味の拡張 / 言語と文化 / 語彙・語彙知識 |
Research Abstract |
初年度(平成18年度)は研究実施計画に述べたように、次の1のことがらを実行した。そして、2が判明した。 1.メタフォリカルコンピテンスのありようを調べるためのデータ収集:平成18年5月〜19年3月。 (1)比喩的表現(メタフォリカルな表現)認知テスト(Metaphor Cognition Test, M-Cog Test)実施: 対象は日本人英語学習者(178名)と回答の指標とする英語のネイティブスピーカー(American English, British English, Australian English計163名)。 (2)インタビューによる聞き取り調査実施: 対象は上記1のうち、日本人英語学習者27名、回答の指標とする英語のネイティブスピーカー3カ国計59名。 (3)メタフォリカルコンピテンスと語彙力との関連性を調べるため、日本人英語学習者に対して語彙テスト(VLT)を実施。 2.すべてのデータを処理し分析し終わったわけではないが、上記の調査より現時点で次のことが判明している。なお、詳細なデータ処理と分析は平成19年度に行い、文書にまとめる予定。 (1)普遍的な認知・イメージスキーマがベースになっている表現は日本人英語学習者とネイティブスピーカーとの間に理解の差異は大きくないが、注意すべき表現があり、言語使用者がそのような表現にどのように対応すべきか、研究の成果として、体系的にまとめる予定。 (2)文化的背景はメタファー理解に影響がある。日本語独特の発想に基づく表現は英語のネイティブスピーカーに理解されにくく、英語による表現の中で文化や伝統に深く根ざしたものは日本人に理解されにくい。ただし (3)理解に用いられる手立ては、日本人英語学習者とネイティブスピーカーとの間に多少の差異は認められるが、概ね両者のストラテジーは似通っているので、これをさらに敷衍すると理解の向上に役立てられる。 (4)先行研究で明らかにした語彙力とメタフォリカルコンピテンスとの関連性は今回の調査でも実証できそうであるので、英語学習者の語彙力向上が(この比喩的表現の理解と運用だけでなく、英語力全般にわたって)重要。 (5)語彙力向上に資するために、比喩的表現の理解と運用に関わる認知作用、就中、セマンティックフィールドを広げる手立て、語と語とのつながり(ネットワーキング)の認識を言語学習にとり入れるとよい。 (6)スムースで高度な英語力向上に資するために、英語教育において本研究のような認知作用の研究を深化させる必要がある。
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