2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者における一致形態素使用の随意性の要因に関する研究
Project/Area Number |
18520476
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
坂内 昌徳 福島工業高等専門学校, 一般教科(英語), 准教授 (60321387)
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Keywords | 第二言語習得 / 統語論 / 形態素 / 英語教育 |
Research Abstract |
本研究は、日本人英語学習者による「3単現の-s」の使用の随意性について、その要因を明らかにすることを目的とする。最近の生成文法の枠組みによる第二言語習得研究で提案されてきたいくつかの第二言語習得モデル、即ち、「表層屈折欠損仮説(Missing Surface Inflection Hypothesis)」、「素性標示不全仮説(Representational Deficit Hypothesis)」について、実験データを収集して妥当性を検討する。 平成18年度は1つめの実験として(1a-f)のようなタイプの統語的な構造をコントロールした実験文を用いた口頭和文英作文タスクを用いて、TOEIC500点以上の学習者を対象にデータを収集した。 (1)a. The doctor uses/used a computer. b. The doctor of the clinic uses/used a computer. c. The doctor who came recently uses/used a computer. d. The doctor often uses/used a computer. e. The doctor of the clinic often uses/used a computer. f. The doctor who came recently often uses/used a computer. この結果、日本人英語学習者は「3単現の-s」の使用においては(1a),(1b),(1c)に比べ、(1d),(1e),(1f)のタイプの文で「3単現の-s」の脱落による誤りが有意に多くみられることが分かった。一方で「(規則動詞の)過去形の-ed」の使用においては、「3単現の-s」の使用にみられた文タイプによる誤り(脱落)の頻度の差は無く、ほぼ全てのタイプの文において正しく「過去形の-ed」を使用できることが分かった。 以上の結果から、日本人英語学習者の「3単現の-s」と「過去形の-ed」の使用においては、文の統語構造の違いがこれらの形態素使用の精度に及ぼす影響が異なることが判明した。「過去形の-ed」においては統語構造による影響がなかったことは「過去形の-ed」の使用においては動詞のv[utense]と機能範疇TのT[tense]との間でのAgreeによって正確な形態素の使用がなされる、あるいは、これは日本語に存在すると考えられるT[tense]を動詞の語尾に音形表示する操作を「-ed」に適用しているという2つの可能性があることを示唆する。一方で「3単現の-s」では、統語構造(vP-adjoined Advの存在)が脱落を多く引き起こした。このことは彼らり「3単現の-s」の使甲が時制/一致素性によるAgreeによるものではないことを示唆する。
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