2007 Fiscal Year Annual Research Report
日韓文化の比較-日本八幡宮総本山・宇佐八幡宮の百合若説経と韓国の成造神話
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18520482
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
金 賛會 Ritsumeikan Asia Pacific University, アジア太平洋マネジメント学部, 教授 (00331124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 明 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (70298181)
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Keywords | 百合若説経 / 成造神話 / 宇佐八幡 / 豊国奇巫 / 巫女 / 法師 / 巫覡集団 / 建築神 |
Research Abstract |
本研究は、日本八幡宮総本山・宇佐八幡宮の百合若説経と韓国の成造神話の歴史的、民俗学的比較研究を行なうことに目的があった。今回の研究、現地調査を通して次のような成果が得られた。 1.「百合若説経」は、大分(豊後)の柞原八幡、宇佐八幡、佐賀(肥前)の淀姫神、玄海島の小鷹大明神、壱岐の手長男神社の神の前世物語となっている。ここは主人公の百合若が苦難を受けながら遍歴の旅をした場所でもある。また、壱岐・対馬にもこの「百合若説経」が伝承される。さらには「百合若説話」が韓国のシャーマンによって伝承されている。以上のことから「百合若説話」の伝播経路は、韓国-対馬-壱岐-玄海島-佐賀-宇佐-大分市のルーツが明らかになった。 2.では上記の「百合若説話」を運んだ巫覡集団はどのようなものであったろうか。宇佐神宮の八幡祭祀集団の中では朝鮮半島と関わりを持つ辛嶋勝意布売が禰宜、つまり神に仕え、託宣などをする巫女の役割を担っていた。また『新撰姓氏録』には宇佐(豊国)には〈豊国奇巫〉の存在が見えており、『日本書紀』用明天皇二年条には、〈豊国法師〉が天皇の病気の時に呼ばれたことが記されている。さらには『続日本紀』大宝三年条には、「癸丑、僧の法蓮に豊国の野四十町を施し、術を褒めたるなり」と記されており、僧の恰好をしながら治療の活動を行った宗教者・法蓮の存在が注目される。韓国ではシャーマンが祭りを司る役割を担っている以外にも、治療の活動を行っているが、彼らを法師さまと呼ぶこともあり、「豊国法師」の法師との関連が明白になった。この事実から考えれば日本にもかつては建築神の由来を語る韓国の「成造神話」に近似した祭文が存在し、それが九州から壱岐、対馬を往来した巫覡に取り込まれ、百合若夫妻の八幡の神々示現を主張する「百合若説経」の源流となったことが明らかになった。
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Research Products
(2 results)