2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代世界システムのサブシステムとしての不平等条約体制に関する研究
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18520488
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小風 秀雅 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (90126053)
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Keywords | 不平等条約 / 居留地 / 世界システム / 自由貿易帝国主義 / 条約改正 / 冊封体制 / 日清戦争 / 中国分割 |
Research Abstract |
本年度は、不平等条約体制の終焉に関し、以下の3点の問題について研究を進めた。 1. 不平等条約体制が如何に東アジアの冊封体制と対立し、冊封体制を突き崩していったのか、という点については、世界システムのサブシステムである不平等条約体制の論理に基づいて行なわれた日本による朝鮮の開国のプロセスについて、琉球問題・台湾問題とのアナロジーから、大久保政権下における日本の外交交渉方法の変化と、列強との連携の側面を解明しつつ、その後の中国の周辺地域における米、仏、英、露との地域紛争が冊封体制との対立を基盤として生じたことを指摘し、1874年における日本の琉球処分を目的とした台湾出兵が、こうした不平等条約体制と冊封体制との対立の基点となったことを明らかにした。従来、日中関係のなかで理解されてきた琉球・台湾・朝鮮問題を、19世紀の世界システムと冊封体制の矛盾の問題として本格的に位置づけたのは、本研究が初めてである。 2. 不平等条約体制は、日本の場合、条約改正の成功によって崩壊した。そうした改正過程のなかにおける明治憲法制定の重要性を再評価するとともに、制定を機に明治維新の歴史的見直しが開始され、勤皇史観が自生的に成立したことを、明らかにした. 3. 不平等条約体制が終焉を迎える契機となった日清戦争と下関講和条約については、投資条項による中国分割の側面が強調されているが、同時に、冊封体制に代わる地域アイデンティティとしての「東洋」が登場し、20世紀世界における東アジアの地域性に対する意識が誕生したことを明らかにした。
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