2006 Fiscal Year Annual Research Report
1940年代中国の戦時動員による社会変容に関する研究
Project/Area Number |
18520533
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
笹川 裕史 埼玉大学, 教養学部, 教授 (10196149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 哲 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (80144187)
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Keywords | 東洋史 / 日中戦争 / 戦後内戦期 / 戦時動員 / 食糧徴発 / 徴兵制 / 知識青年従軍運動 / 農村 |
Research Abstract |
本研究の目的は、未刊行の「〓案」史料(行政文書)および地方新聞・稀覯雑誌を系統的に収集・分析し、1940年代中国の戦時動員がもたらした社会変容を、当時の国民政府の拠点であった四川省(日中戦争期および戦後内戦期)と長江下流域(戦後内戦期)の農村部を主な対象として解明することである。本年度の主な研究実績は、次の2点に集約できる。第1点は、成都市にある四川省〓案館を訪問して史料調査・収集を行うとともに、当時の地方新聞等を購入・整理(マイクロフィルムのPDF化)して解読作業をすすめたことである。第2点は、上記研究課題に深く関連する一般向けの著書出版に向けた準備作業を完了させたことである。後者は、すでに印刷段階に入り、次年度の早い時期に出版される予定である(笹川裕史・奥村哲『銃後の中国社会--日中戦争下の総動員と農村』岩波書店、2007年刊行予定)。今年度の具体的な研究成果としては、研究代表者が次の2つの研究論文を公表した(研究発表欄、参照)。一つめの論文では、日中戦争期の知識青年従軍運動を取り上げ、当時の徴兵制の実態との関わりで、その意義と問題点を分析した。同運動においてナショナリズムは大きく高揚するが、その波及範囲には一定の限界があったことを明らかにした。もう一つの論文は、日中戦争期の食糧の戦時徴発と人民共和国初期の食糧徴発を比較し、その連続面と断絶面を考察した。人民共和国初期において国家の農村把握は格段に進展して食糧徴発量も飛躍的に増大するが、それを支えた徴発方式は、日中戦争末期から戦後内戦期の国民政府による戦時徴発においてもすでに試みられていた事実を明らかにした。新たな視角から、人民共和国時期につながる1940年代の動向の一端を摘出することに成功したといえる。
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Research Products
(2 results)