2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 正博 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (30211379)
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Keywords | 流刑 / 強制移動刑 / 獄官令 / 天聖令 / 唐律 / 唐令 |
Research Abstract |
本研究は、漢魏六朝時代における強制移動刑の展開について考察を行うとともに、それが唐律の流刑(理念とその現実社会への対応)に対してどのような影響を及ぼしたかを解明しようとするものである。秦・漢初の遷刑、漢〜魏晋南朝の「徒遷刑」、北朝の流刑が主たる考察の対象となるが、これらについてはすでに一昨年度の研究でおおよその目途がつき、また、論文として成果も発表済みであることから、今年度は昨年度に続いて、隋唐時代の強制移動刑を主たる考察対象とした外、さらに進んで、宋代の強制移動刑にも視野を広げて、資料収集および研究を行なった。その主たる成果を以下の通りである。 (1)六朝隋唐〜宋代法制史料の収集とデータベース化:正史や『資治通鑑』を丹念に読み込むほか、『冊府元亀』『文館詞林』や石刻史料、『宋会要輯稿』『続資治通鑑長編』などから広く法制史関連資料を抽出して、既存のデータベースを補った。 (2)敦煌・吐魯番出土資料の精査と六朝隋唐法制史関連資料の抽出:国内の研究機関が所蔵する敦煌・吐魯番出土資料の写真・マイクロフィルムを精査し、関係資料の収集を行った。今年度も昨年度に引き続いて、ロシア所蔵の敦煌文献資料および吐魯番出土の資料に重点を置いた。 (3)天一閣所蔵「天聖令」の内容精査および唐令復原研究の推進:2006年11月に公開された「天聖令」は北宋前半に編纂された法令集であり、唐令研究にも寄与するところの大きい新資料である。刑罰制度研究との関わりから「獄官令」について精査して内容を検討するとともに、唐令復原研究のための基礎的研究を行なった。その結果、天聖令は唐令を下敷きにして編纂された法典であり、そこに掲載された法令は、いわゆる唐宋変革による社会の大変動に必ずしも対応していないこと、したがって天聖令所載の条文だけでは宋初の社会と法令の関係を窺い知ることは難しいこと、等の見通しを得ることができた。
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