2006 Fiscal Year Annual Research Report
後期ローマ帝国時代西方属州の政治的展開に関する多元的解析の試み
Project/Area Number |
18520563
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
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Keywords | ローマ帝国 / 古代末期 / 属州 / ゲルマン人 / ブリテン / ドイツ / スイス / リメス |
Research Abstract |
本計画の第1年目であった本年度、研究実施計画通り、まずは後期ローマ帝国西部に関する1960年代以降の諸研究を収集・精読し、研究史を明確にすることに努力した。その結果、ピーター・ブラウン教授の論文に始まる「古代末期」学派台頭以降も、帝国の西部については東部に比してローマ史の側からの研究は進展しておらず、政治的展開については中世史研究者、とくにゲルマン民族の移動に関する諸研究からの影響があることが看取された。また、海外での実地調査についても、予定通りドイツとスイスについてこれを実施することが出来た。ドイツのケルン大学とテュービンゲン大学に拠点をおいて、ケルン大学のW・エック教授、テュービンゲン大学のM・マイヤー教授、H・ブルム博士の協力を得て研究文献を調査した。また、スイスのテューリヒの西方にあるウィンドニッサ遺跡で、円形闘技場等の遺跡や博物館所蔵の遺物の調査も出来た。ドイツ南部からスイスにかけての地方は、ローマによる征服以後長らくリメスと呼ばれる防衛柵で帝国外の諸部族より守られていたが、後期ローマ帝国時代にはそれが破られて、この地方のローマ人定住地は被害を受けている。こうした点についても、実地で確認できた意義は大きい。ブリテン島については、以前に実地調査したポートチェスターとリッチバラの両遺跡について、発掘報告書などを参照しつつさらに調べることが出来、論文にまとめて『西洋古代史研究』第6号誌上に発表した。日本国内の後期ローマ帝国研究者、特に若手の研究者ともいくつかの集まりで研究情報の交換が出来、オックスフォード大学の考古学者で古代末期に詳しいワード=パーキンス博士を招いての講演会も京都大学で開くことが出来たので、情報の収集をはじめとする研究の基盤固めは第1年目でまず出来たと考えている。
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Research Products
(3 results)