2008 Fiscal Year Annual Research Report
後期ローマ帝国時代西方属州の政治的展開に関する多元的解析の試み
Project/Area Number |
18520563
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 Kyoto University, 文学研究科, 教授 (40174099)
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Keywords | ローマ帝国 / 古代末期 / 属州 / ゲルマン人 / ブリテン島 / ドイツ / スイス / リメス |
Research Abstract |
本年度は本研究の第3年目であり、計画通り「ゲルマン人」概念の再検討を中心におこなった。後期ローマ帝国の西部について政治史上最も重要な問題は「ゲルマン人」の侵入をどう理解するかであり、これに関する欧米での研究成果を吸収して、自身の研究のスタンスを定めることが課題であった。研究の結果、一般的な理解と異なり、現在の研究の最前線では、「ゲルマン人」を同じアイデンティティを保持し続けた固定的な人的集団として捉えてはいないことが確認できた。同時に、アラマンニ族、フランク族、ゴート族などの重要な人々について、史料の状況とこれからの分析の視角をつかむこともできた。 後期ローマ帝国をより広い視点から考える作業も並行しておこない、とりわけ2008年5月に開催された日本西洋史学会大会で「ローマ帝国の『衰亡』」を考えるシンポジウムを主宰し、多くの研究者の参加を得て、議論を深めることができた点は大きな成果であった。後期ローマ帝国時代をローマ帝国の末期という歴史把握ではなく、「古代末期」という新しい概念で捉えようとする1980代以降の新しい研究動向について、問題点を明確にしえたことは、本研究の今後の取り組みに大いに参考とすることができる。このシンポジウムの成果は、学会誌『西洋史学』に「フォーラム」として投稿済みである。 海外調査も予定通り実施し、とくにミュンヘンのドイツ考古学研究所で研究者との意見交換と資料調査ができたことは、上述の「ゲルマン人」の研究の点できわめて大きな成果をもたらした。
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