2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代イギリスの地域イヴェントにみる本国社会と帝国の多面的相互関係に関する研究
Project/Area Number |
18520565
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
川本 真浩 Kochi University, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (20314338)
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Keywords | 西洋史 / パジェント / イギリス史 / 都市史 |
Research Abstract |
本年度は、関連文献及びデータの整理・分析ならびに考察を進め、年度末(研究期間の最後)までに判明した事項の総括・とりまとめを行った。具体的内容は次のとおりである。 まず、年度前半に集中して、これまでに収集した史料を整理すると同時に、第1次世界大戦前のイングランドにおけるパジェントに関する基礎的事実を整理・分析した。大戦間期(主として1930年前後)のパジェントについても相当程度の史料を収集・整理したが、調査時間の関係等から十分な史料を集められなかったため、内容整理等はその一部にとどまった。また、6月にはイギリスにて調査を行った。そこでは第1次世界大戦前の史料のうち不十分であったものを重点的に収集するとともに、1908年にドーヴァーで開催されたパジェントの再演部分を含む実際のパジェント公演を同地にて観察した。 年度後半は、これまでに整理した史料その他のデータから20世紀初頭のイングランドにおけるパジェントについての知見を集成すると同時に、特定の事例に注目して具体的な分析や考察を試みた。そのなかで、先行研究でほとんど顧みられていないものの本研究での視点から重要な事例であると考えられるドーヴァー・パジェント(一九〇八年開催)に焦点を合わせて、詳細にわたる考察を試みた。その結果、地域イヴェントからあぶりだされる都市社会の購造やガヴァナンスの問題をとおして、本研究の目的である本国社会と帝国の多面的相互関係を議論するための重要な基盤を築くことができた。 上記のような研究活動は、地域イヴェント、都市社会、帝国に関する一定の研究成果をもたらすと同時に、いくつかの予期せぬ史料の発見とそれによる新たな課題をも見出すことになった。本年度の研究は、今後のさらなる研究のための基盤が築かれたという意味で、大きな成果をもたらしたといえる。
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