2008 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期ハルビンにおけるロシア人社会の歴史的位相
Project/Area Number |
18520567
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
中嶋 毅 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 准教授 (70241495)
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Keywords | 西洋史 / ロシア人 / 中国 / ハルビン / 亡命者 / 知識人 |
Research Abstract |
本研究は、1917年のロシア革命から1950年代にいたる時期の国際都市ハルビンにおけるロシア人の諸活動を分析することを通じて、亡命ロシア文化とソ連体制との相互関係を実証的に検討することを目的とした。本年度は、ハルビン在住ロシア人の文化・教育活動とその意義を考察した。 この研究課題の遂行を通じて、以下のような諸点を明らかにすることができた。(1)ハルビン在住ロシア人は、中ソ合弁で実質的にソ連が経営した中東鉄道の影響下で、若い世代のロシア人を教育するための独自の教育機関を維持していくことができた。しかし「満洲国」成立後に中東鉄道に対する当局の圧力が増すにつれ、ハルビンのロシア人教育機関の存在も次第に不安定なものとなった。(2)1935年に中東鉄道が満洲国に売却されたことは、在満ロシア人社会に巨大な影響を及ぼした。ソ連国籍者は本国に帰国し、ロシア人教育機関は亡命者の管理下におかれることになった。しかし同時に満洲国当局は、同地の教育制度を日本型教育システムに基づいて再編し始めた。その結果、ロシア人教育機関に対しても満洲国当局から大きな圧力が加えられ、とくに複数校存在していたロシア人高等教育機関は全満洲を通じてただひとつの教育機関、すなわち当局が設立した「満洲国北満学院」に統合された。(3)満洲国のロシア人社会において、新たに設立された北満学院は二面的な役割を果たした。一方で当局は、亡命ロシア人の若者を統合し統治体制に従順なロシア人エリートを養成するために北満学院を利用した。しかしもう一方で北満学院は、満洲国統治下という大きな制約の中ではあったが、ロシアの伝統的文化を維持しそれを次世代に継承するための独自の組織として重要な歴史的役割を果たした。
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