2007 Fiscal Year Annual Research Report
古代スパルタの国家構造の再検討:ペリオイコイ研究の視角から
Project/Area Number |
18520571
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
古山 正人 Kokugakuin University, 文学部, 教授 (20181472)
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Keywords | キュテラ / キュテロディケス / スパルタ / 裁判 / ヘイロタイ / ペリオイコイ / メッセニア / スパルタ |
Research Abstract |
今年度はAmerican School of Classical Studies at Athensにおける文献収集・論文のドキュメンテイション、並びにメッセニアの現地踏査を踏まえて、メッセニアのペリオイコイ集落について検討した。その結果、確実にペリオイコイ集落と判断できるものはアイタイア、アシネ、アウロン、トゥーリア、カルダミュレー、モトーネー、コロネ、フェライ、タラマイの9集落である。さらに確証はないが5集落を加え、最大限14集落にその可能性が考えられる。その多くは海岸部と交通の要路に位置し、ヘイロタイ居住地域と外部世界との交通・連絡を抑える形で配置される。メッセニアの集落がペリオイコイとなった時期を確定することははなはだ難しく、最終的には第2次メッセニア戦争の結果、安定的にペリオイコイとしてラケダイモン人の国家に位置づけられるに至ったという一般的な結論で満足しておくしかない。古典期に、建設されたと思われるものも存在する。スパルタはペリオイコイの配置をメッセニア征服後直ちに完成したのではない。さらに、キュテラ島についても検討を加え、おおむね成稿し、今夏には公表される。 ペリオイコイの裁判については、スパルタ当局、エフォロイがペリオイコイを逮捕し、裁判を経て処罰する権限を持つというのが法原則であったと推定されるが、エフォロイによる裁判なしでの処刑は、可能性としては排除できない。キュテロディカイがキュテラ人とキュテラにいるスパルタ人の係争を扱ったのだとしても、これはキュテラに独自の例外的な措置であったであろう。通常、ペリオイコイとスパルティアタイの係争はスパルタで処理されたと考えられる。また、ペリオイコイはその住民間、あるいは他のペリオイコイ共同体の住民と自己の共同体の住民との間の係争の裁判を行い、後者の場合に、スパルタの法廷にいわば上訴する形で最終決着が図られた可能性は想定できるであろう。
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