2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520586
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝口 孝司 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 助教授 (80264109)
|
Keywords | 考古学的年代決定 / 理化学的年代決定 / AMS年代測定 / 弥生時代 / 日本 |
Research Abstract |
本年度の研究計画は、1)土器を用いた西日本弥生時代中・後期の相対年代網の確立、2)西日本相対編年網への、北部九州地域の成人用大型甕棺相対編年の対比、3)相対年代的位置の厳密な決定の可能な遺構出土の絶対年代決定可能遺物の資料批判と、それに基づく弥生時代中・後期各段階の「考古学的」絶対年代の比定、4)成人用大型甕棺出土人骨のAMS年代測定、5)相対年代的位置の厳密に決定可能な遺構出土植物種子のAMS年代測定、6)上記AMS年代の、最新の較正曲線を用いた実年代への較正、7)AMS較正年代と3)との予備的比較、8)AMS較正年代と、国立歴史民俗博物館研究グループによる土器付着炭化物に関する、相対年代的に同時期のAMS較正年代との予備的比較、以上であった。 1)・2)・3)の成果は以下の通りである:北部九州中枢域(福岡平野・筑紫平野北部)における弥生時代中期〜後期過渡期資料の増大により、成人用大型甕棺と日常用土器との厳密な並行関係の確定が可能となった。結果は橋口達也氏による甕棺編年のKIVb/cタイプ甕棺と高三潴式土器(北部九州地域後期前半)後葉土器との並行関係、これらと瀬戸内地域後期初頭土器との並行関係が確認された。このことから、瀬戸内地域弥生後期(弥生V期)初頭の上限は、実年代で紀元後50年代前後となる。この結果は、橋口達也氏らの説を支持するものであり、瀬戸内弥生V期開始年代を紀元1年前後と見る諸説を否定するものである。また、後者の根拠の一つとされた、瀬戸内地域弥生時代V期初頭資料とともに一括資料として出土した紀元1世紀ごく初頭のみに鋳造された中国貨幣はいわゆる「模鋳銭」の可能性が高いことを確認した。 4)は、バインダー処理等保存処理による汚染のない、中期初頭〜中頃人骨資料が得られた段階であり、年代測定は来年度に行うこととなった。 5)・6)については、年度後半に、福岡県小郡市北部丘陵地域という特定地域から、弥生時代前期後半から後期初頭にかけての種子資料がシリーズとして得られ、AMS年代測定が完了したところである。較正と7)・8)の作業は現在進行中である。また、この資料については、ブラインドでもう一カ所の測定機関での測定も予定している。
|