2007 Fiscal Year Annual Research Report
旧石器集団の移動領域と黒曜石採取戦略-北海道を事例に-
Project/Area Number |
18520588
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
長崎 潤一 Sapporo International University, 人文学部, 教授 (70198307)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 旧石器 / 黒曜石 / 北海道 / 蛍光X線分析 |
Research Abstract |
1.北海道において旧石器集団がどのような領域を遊動していたのかを検討するため、石器型式や剥片剥離技法から地域圏(渡島半島、石狩低地帯南部、十勝、上川盆地、湧別川流域、道東)を設定した。この地域圏内の遺跡について既知の黒曜石原産地分析に加え、今回新たに行った蛍光X線分析装置による原産地分析結果を併せて、各石材原産地への依存度を分析した。 2.十勝地方、石狩低地帯南部、白滝地域の各遺跡の資料についての補足的な黒曜石原産地分析と既知のデータを併せて検討を行った。遺跡の石器組成、石材比率、個体別資料、原石形状、剥片剥離工程などのデータと黒曜石の原産地分析結果とを併せての検討を行った。この中で千歳市柏台1遺跡の掻器を中心とした石器群は利用石材が特異であった。柏台1遺跡では在地の多用な石材と黒曜石(赤井川産・白滝産)を併用している。このような石材組成が何に起因するのか、距離的には近くに存在するが保有石材の異なる祝梅遺跡三角山地点と対照的である。柏台1遺跡はスクレイパーの製作、使用が顕著であり、こうした遺跡の機能が在地石材への依存を高めた一因と考えられよう。 3.祝梅遺跡三角山地点の石器群の分析を進めた。祝梅遺跡三角山地点は赤井川産の黒曜石に強く依存した石材利用である。遺跡と原産地は直線距離でさえ100km以上離れている。この間の地域では当該時期の遺跡はほとんど見つかっていない状况なので、遷移的な状態を詳細に検討することは難しい。ほとんど遠隔地の単一石材産地に依存した当該集団の石材保有状況は石材の獲得消費を検討する好例であることは疑いない。祝梅遺跡三角山地点では遺跡外への搬出石核は確認出来ず、石核に利用できるサイズの大形剥片の持ち出しも確認できない。集団は頻度の高い移動性を持ち、遠隔地までかなりの速度で移動することが推定されよう。
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