2008 Fiscal Year Annual Research Report
旧石器集団の移動領域と黒曜石採取戦略 ー北海道を事例にー
Project/Area Number |
18520588
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Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
長崎 潤一 Sapporo International University, 人文学部, 教授 (70198307)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 分析科学 / 旧石器 / 黒曜石 |
Research Abstract |
昨年度までに実施した蛍光X線による黒曜石原産地分析を元に、各遺跡での産地別点数比率、重量比、石器組成、石材消費過程などを検討した。北海道の後期旧石器時代の石器群には明確な石材選択性が認められるが、道央、道東、道北地域では黒曜石に強く依存した石材運用を行っており、黒曜石以外の在地石材の活用は限定的である。黒曜石と補完的に利用される頁岩については、原産地推定の方法が確立されておらず、産地を決定できないため、道南の石器群について本研究では検討出来なかった。黒曜石の原石形状について、角礫、亜角礫、円礫の残存礫面の観察を行った。十勝地域では黒曜石円礫素材を利用する石器群は、特殊化した剥片剥離工程を採用しており、角礫素材の場合は汎北海道的な剥片剥離工程を採用していた。原産地とその下流域での石材採取戦略の一端を伺うことができた。また白滝遺跡群の前半期石器群において、円礫素材が頻繁に利用されており、河川での石材採取活動が主体であったことが明瞭であった。 旧石器集団の年間スケジュールについての検討を行った。現在より寒冷な更新世の気候環境を考えると、標高の高い山地に立地する黒曜石原産地で冬季に石材採取を行うことは困難であり、狩猟地、越冬地、石材補給など年間の遊動スケジュールの中に組み込んで移動する「埋め込み戦略」について考究する必要がある。千歳市内の該期石器群の分析をとおして、埋め込み戦略を含め、石材採取と遊動領域モデルについて検討した。石材産地から距離のある消費地遺跡では、素材となる石材の産状によって、剥片剥離も石器組成にも影響を受けることが推測された。1遺跡での複数産地黒曜石の利用については、原産地分析の実施資料数が少なかったためか、顕著な傾向を見出すことは出来なかった。
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