2007 Fiscal Year Annual Research Report
京都における伝統工芸の成立と発展、近現代窯業の考古学的研究
Project/Area Number |
18520594
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
木立 雅朗 Ritsumeikan University, 文学部, 教授 (40278487)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 聡 立命館大学, 文学部, 講師 (10368011)
|
Keywords | 近代 / 民俗考古学 / 実験考古学 / 窯業 / 京焼 / 伏見人形 / 日本 |
Research Abstract |
京焼に関わる考古学的検討(道仙化学製陶所出土遺物・鳴滝乾山窯跡出土遺物)の検討を進め、さらに民俗学的検討(藤平陶芸所蔵史料の検討、京焼登り窯の測量調査、匝鉢の収集)などを行った。また、伏見人形の民俗調査と京都市内から出土した土人形の比較検討作業を行い、出土品の意義について検討した。 考古資料の検討では、御室仁清窯跡・鳴滝乾山窯跡・京都大学付属病院(聖護院乾山)を比較検討したところ、窯道具には明確な差が確認された。御室(仁清)→鳴滝乾山→(二条丁子屋時代乾山)→聖護院乾山(二代目乾山)の間で明確な変遷が確認された。しかも、その変化の中で近年美濃で確認された匝鉢の変化と類似した変化が確認され、単なる窯道具ではなく、美濃や京都を繋ぐ広い範囲での交流を示している。 また、鳴滝乾山窯跡から出土した金炭窯(軟質施紬陶器窯・上絵窯)の復原と焼成実験を行った。これにより、窯の耐久度が高いこと、風が強く吹く場所では還元雰囲気によって窯変をおこすこと、製品の失敗率が極めて低いことなどを確認した。鳴滝乾山窯跡では軟質の遺物が多く、登り窯での失敗品よりも多い。失敗率は登り窯のほうが高かったと想定されるが、そうだとすると鳴滝窯における仁清系統(高火度焼成)と押小路焼系統(軟質施紬陶器)の比率は、後者のほうが高かったと想定される。 五条坂と信楽を中心とした民俗調査では、京焼の軍需工場であった五条坂・藤平陶芸所蔵の文書や、信楽焼の地雷に関わる聞き取り調査によって伝統工芸が近代化を達成する過程において戦争と如何に関わってきたのか、それによって「伝統」の枠組みが如何に変わったのか、という点について検討することができた。 京都市内から出土する土人形は、公家・武家・町人・農民に関わる遺跡の区別なく、多量に出土するが、それぞれに傾向が異なる可能性がある。陶磁器や瓦などに比べて消費者の差を示しにくいが、二条家邸宅跡や京都大学構内(農地)から出土するものについては、明確な差が確認できる。土人形の生産も京都の伝統工芸との関わりのなかで位置づけることで大きな展開を見込むことができる。
|
Research Products
(3 results)