2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520598
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第2課, 主任研究員 (20301004)
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Keywords | 古墳時代 / 武装 / 儀仗性 / 鉄鏃 / 編年 / 日韓 / 銅鏃 / 地域性 |
Research Abstract |
古墳時代の前期から中期の資料を中心に、北作1号墳、庭鳥塚古墳、吉備塚古墳、益子天王塚古墳などの調査を行い、武器・武具として、鉄鏃、弓、甲冑類、盾、刀剣類などの資料の収集を行う。 本研究には古墳時代全般を対象とした相対年代観の確立が不可欠であり、基盤となる鉄鏃編年を対象として、個別に研究していた前期、中期、後期の編年の統合を進めた。 その成果をもとに、国立歴史民俗博物館・韓国国立釜山大學校博物館の主催する歴博国際研究集会において「鉄鏃にみる日韓古墳時代の年代観」を発表する。日本の古墳時代全般だけでなく、同時期の半島南部の鉄鏃を扱い、日韓の鉄鏃相対編年を作成し、相対年代案を提示した。さらに、古墳時代の実年代を示す紀年銘資料等についての自らの見解を示し、現段階での実年代観の限界を示し、一定の蓋然性として前期、中期、後期の各型式の年代観を提示した。さらに、これをもとに韓国研究者との討論を行った。 また、その成果をうけて第8回古代武器研究会において「古墳時代鉄鏃研究の諸問題」を発表する。鉄鏃研究の変遷をたどり、単なる相対年代観を示す資料としての編年研究段階から、地域性の抽出により武器生産における地域間交流の粗密を議論できる段階に入ったこと、そして半島南部、三燕、高句麗などの中国東北部を含めた広域での個々の型式分布の変遷が連動しており、それが日本列島の鉄鏃変遷の原動力となっていることを示し、日本の古墳時代鉄鏃様式が東アジアの中での地域性の一様相に過ぎないことを論じた。 鉄鏃の広域編年表には、日本の古墳出土鉄鏃型式の示す多様性と特異性が明確に現れている。鏃身形態の実用性以外の選択結果として多様な型式を評価でき、儀仗性の存在を見出すことができる。鉄鏃の地域性についての分析は、地域間の交流の粗密を見出すのに有効であるが、より広域の対外交流においても、その有効性を確認しつつある。
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