2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520598
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
水野 敏典 Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture, 埋蔵文化財部, 主任研究員 (20301004)
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Keywords | 古墳時代 / 武装 / 儀仗性 / 編年 / 鉄鏃 / 儀仗的武装 |
Research Abstract |
本年度は、武装として武器・武具研究の統合を進め、武装の変遷の中での儀仗性の表出過程を検討した。 (1)研究発表(1)「古墳時代前期柳葉式鉄鏃の系譜」『橿考研論集15集』と(2)「前方後円墳出現前後の副葬品構成と鉄鏃」『ホケノ山古墳の研究』、「鉄鏃の製作技術にみる生産の実像」(大阪大谷大学公開講座)を発表した。 (1)は懸案であった前期鉄鏃編年を柳葉式鉄鏃の変遷から細分した。鏃身側面に鍛造の面をもち、側面分類で鏃身から茎部に段差をもつ形態の出現が、古墳時代鉄鏃の画期となること、柳葉式では鏃身尻平面形が丸い形態が最古相で、次に鏃身に屈曲をもつ形態、さらに側面分類で鏃身関に段差のない形態への変遷を明らかとした。(2)は(1)に短茎鏃を加えた編年観をもちいて、前方後円形の墳丘採用と新型柳葉式の出現とさらに銅鏡と多量の武器という副葬品構成の変化が、同時期であることを確認し、前方後円形墳丘の採用とともに設定された一連の祭祀の一部として鉄鏃群があると考え、古墳時代開始の画期を論じた。(3)は古墳時代の柳葉式鉄鏃は、従来の薄い鉄板を用いるものとは異なり、厚みのある素材を経て全面鍛造で製作されるなど、編年画期と各時期の製作技法の変遷との一致を確認した。 (2)まとめ武装の実用性と儀仗性の二面性の評価として、武器・武具の型式編年においる型式組列の途絶に注目し、その儀仗性を見出す視点を得た。型式の途絶は、短期的な必要性による型式採用を示しており、そこに非実用的(儀仗的)な要素を見出した。短甲などは、武具としての必要性に変化が認められない中で姿を消しており、その前後には実用面よりも儀仗面が重視されていたと判断できる。 その意味で鉄鏃の目まぐるしい変遷は、大陸からの新技術の導入と連動しており、多くの型式はその機能性よりも新技術を導入した形自体に儀仗的な意味を見出していたとの結論を得た。
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