2006 Fiscal Year Annual Research Report
工場の履歴効果と日本企業の立地転換に関する数量経済地理学分析
Project/Area Number |
18520604
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 宏 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50181748)
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Keywords | 企業立地 / 工場立地 / 履歴効果 / 工場閉鎖 / 産業空洞化 / 海外立地 / 地域経済 / 地域政策 |
Research Abstract |
本研究では、日本の主要企業の工場について、その履歴データを収集し、工場の新設、移転、閉鎖、製品転換といった変化の内容を書き込んだ「工場履歴書」を独自に作成し、工場の変化の実態を数量的に明らかにすることを目的としている。1年目にあたる本年度では、以下の作業を行った。 1 企業立地に関する最近の研究成果の整理および工場立地に関する統計資料の分析 2 企業立地データベースの構築および「工場履歴書」台帳の作成 3 新聞記事、社史等からの企業・工場履歴情報の入手 4 日本の大規模工場500工場へのアンケート調査の実施と工場パンフレット類の収集 これらの作業を通じて得られた知見は、以下のようにまとめられる。 1 「工場立地動向調査結果」を中心に企業立地・工場立地を長期的に分析した結果、(1)2002年以降再び国内立地件数は増加傾向にあるが、国内回帰と海外立地が並行する複雑な局面に入っていること、(2)工場が地方に分散する時代は終わり、大都市圏地域に立地が集中する傾向が強まっていること、(2)衣服、電気機械に代わり、輸送用機械や食料品、一般機械の構成比が伸びてきていることなどが明らかになった。 2 『有価証券報告書』等を用い、主要企業の工場の変化を調べた結果、1975年から1990年にかけては、多くの企業で工場の新設、従業者数の増加がみられたのに対し、1990年から2005年にかけては、工場の閉鎖、従業者数の減少を示す企業が多くを占めていた。 3 大規模工場へのアンケート調査の結果、製品内容の大幅な変更があった工場、所有企業の変更があった工場は、ともに3割前後を占めること、「工場の履歴が現在の工場の競争力に大変役立っている」と答えた工場が35%を占め、「ある程度役立っている」と答えた工場と合わせると8割近くを占めることが明らかになった。 こうした成果をふまえ、次年度では工場の履歴効果が工場の立地変化にどのように関わっているかを詳しく検討するとともに、政策的課題を明らかにしていきたい。
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Research Products
(3 results)