2007 Fiscal Year Annual Research Report
工場の履歴効果と日本企業の立地転換に関する数量経済地理学分析
Project/Area Number |
18520604
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 宏 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50181748)
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Keywords | 企業立地 / 工場立地 / 履歴効果 / 工場閉鎖 / 産業立地 / リストラクチャリング / 産業空洞化 / 地域イノベーション |
Research Abstract |
本研究では、日本の主要工場について、その履歴データを収集し、工場の新設、移転、閉鎖、増強、縮小の実慰を数量的に明らかにするとともに、戦後の高度経済成長期以降、日本企業の立地転換がどのように進んできたのか、業界構造や企業組織・企業文化、本社所在地等による違いに着目しながら、立地変化の地域的傾向を解明することを目的とした。 日本の大規模工場へのアンケート調査結果によると、「工場の履歴が現在の工場の競争力に役立っている」と回答した企業は多く、その効果については、「人材の活用」、「技術の継承」、「ブランドや知名度の活用」、「地域社会との関係の活用」など、多岐にわたっている。こうした履歴効果の検証とともに、本年度はこれまで収集したデータをもとに、数量経済地理学分析を通じて、立地調整の総合的な分析を行った。1978年〜1981年、1986年〜1991年、1996年〜2001年の3期間での製造業従業者数の都道府県別変化を構成要素に分けて検討した。78年〜81年の純増減率では、東高西低の傾向が顕著で、特に、北関東や東北への工場移転の効果が寄与していた。86年〜91年はバブル景気を反映して純増減率の地域差は平準化される傾向にあり、特に、北東北や南九州での新規事業所の開設の動きが顕著であった。また、長野県から滋賀県にかけての地域では、増強による雇用拡大が検出された。96年〜2001年では、一転して純減を示す地域がほとんどを占め、開業率の低下、廃業率の上昇、縮小によって、従業者数の減少が顕著となった。 本研究ではさらに、地域産業政策がこれまでの地方分散政策から産業集積を中心とした政策に転換してきていること、2002年以降の景気回復過程において、国内での新たな立地が進展していることに注目して、その内容を検討した。大都市圏地域に立地が絞り込まれる傾向がある中で、今後の政策的課題として、人材の育成と工場適地の提供、地域イノベーションの実現等を指摘した。
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Research Products
(4 results)